第2話 ファイルを探せ

 男の依頼は、単純だが難しいものだった。


 この街のどこかにある、ファイルを探して欲しいという。


 ファイルの名前も場所も、現実なのかサイバーなのかも、分からない。ただひとつだけ、ファイルの名前のみが分かっている。


 ファイル、Z二番。


「Z2ファイルを、探せばいいのね」


「そうだ。それだけだ」


 男は、去っていった。連絡する気は、ないらしい。たぶん、私を監視するのだろう。


 さっきまでいたカフェを出て、駅前の交差点を歩いて電光掲示板を探す。


 街で一番大きな電光掲示板。それが見えるベンチに、座った。


 さっき買ったドリンクを飲みながら、待った。抹茶オレ。悪くない味。


 一時間ほど。


 電光掲示板に、表示される。


 政治家の名前と、汚職。駅前の土地転がし。


 ざわつく、駅前。


 方々で話し声が聞こえる。ざわめき。


「そうよ」


 あなたたちが、選挙で理性的に選んだ政治家。それが、いまあなたたちが歩いている土地で、お金を洗ってたの。ばかみたいでしょ。


 ざわめきは、加速していく。


 その人の流れを、見ていた。


 いる。


 三人ぐらい。集まって、電話をかけて、電光掲示板を指差して。


 そこに向かって、ゆっくり歩く。


 三人組。こちらに気付いた。

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