和平

 「カ・・カー・・」


 遠くで女性の声がする。


 なんだろう、俺はまだ寝ていたいのに。


 体が揺さぶられる。


 お腹のあたりが暖かい。



 ここは、どこだ?


 みんなの所へ来たのか?




 暖かい。



 明るい。



 あ、あれは、ナギ?



 アデラ?



 「カース!」



 カースはようやく目を開けた。


 王宮の一室らしい。


 ナギが蘇生魔法を詠唱し続けているらしい、シロも一緒に回復魔法をかけてくれている。


 アデラは、ずっと呼びかけてくれていたらしい。



 「何日くらい寝ていたんだ、俺?」



 「もう1週間だな」ナギが冷静に伝える。


 「ラファールは?」


 「死んだよ、カース」


 「そうか」


 「正式な決闘で魔王が倒されたからには、魔人達も何も言うことはないそうだ、アデラはもちろん、連れて帰れるし、人間の自治も認めるということだ、代官の話もとりあえずの間は凍結ということだ」


 「ただ、それでも、都やその周辺の人間の処遇は変わらないんだろう?」


 「そうだな、それをどうにかするには、まだ数百年の時が必要かもしれない」


 「俺が」そう言いかけて、カースは激痛で声が出なくなった。


 「カース、無理はしないで、もう、ね、帰ろう」


 「ああ、そうだな」





 人間と魔人の間で正式に和平が結ばれた。


 人の領土はかつて攻め落した砦から北へ大きく広がり、そこへは魔人は立ち入らないこと。

 砦より南へは、奴隷や食肉用の人間以外は立ち入らないこと。


 この条約は発効後300年、双方順守することとなった。

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