潜入

 城は防御のことはほとんど考えられていなかった。


 攻めてくる者の存在など全く考えていないのだろう。


 ただ、付近にナギ達が潜伏している情報は入っていると見えて、定期的に魔人が巡回している。


 

 3人は下水を通って、城の地下まで到達する。


 かなり匂う。ただ、こんな下水の中にいてもアデラの美しさは目を見張るものがある。


 司令部を叩く。3人が出した結論だった。


 おそらく、ここ最近の魔人の襲撃はこの城が起点となっているはずだ。クシャル達を叩いて、司令部を崩壊させれば、組織だった襲撃はなくなるだろう。


 城は地上9階の建物で、城の中は魔人と亜人で溢れかえっている。


 司令部は9階だ。


 城の中に潜入した3人は奴隷にまぎれて移動を始める。


 まとまっていると目立ってしまうので、3人バラバラだ。


 アデラは、目立ちすぎるのでマントを被っている。


 1階部分は、奴隷の人間も多く、移動がしやすい。


 ただ、どこのエリアでもそうだが、人間の扱いはひどい。


 まだ、5歳くらいの子どもたちが3人ほどのグループで遊んでいると、そこを通りかかった魔人がおもむろに、その1人を捕まえる。


 子どもはびっくりして、手足をバタバタさせる。


 魔人は、その子どもの首を折り、滴る血をなめる。びくびくと痙攣する体は通路に放り投げておく。その体を人間が片づける。おそらくは食肉用に解体されるのだろう。


 そんな、地獄のような光景があちこちに広がっていた。


 路地では、まだ10代前半と思われる少女が、魔人に裸にされている。助けて欲しそうに周りを見る。


 どうしようもない、人として生まれたことを絶望するしかない、そんな状況だった。


 カースは、今にも剣を抜いて飛び出して行きたかった、目の前にいるのは、かつてのラーナだ、それを、作戦のために見捨てるのか。


 ただ、まだ1階だ。ここで戦いを始めれば全ての魔人と戦わなくてはならなくなる。


 

 カースが目を閉じて、通り過ぎようとすると、少女を襲うつもりだった魔人が倒れた。


 アデラの拳が、魔人の心臓を貫いていた。


 通りがざわめく。


 カースは女の子にマントをかけてあげる。


 そして、近くにいる魔人5匹と亜人5人を斬られている本人も分からないくらいのスピードで斬り伏せる。


 また、作戦変更だ、これで、城にいる魔人全てと戦わなくてはならなくなった。

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