下層

 城は1階から3階が下層、4階から6階が中層、7階から9階が上層となっている。


 下層には魔人が150匹、亜人が300人、中層には魔人が200匹、上層には魔人が150匹いる。城主であるクシャル達は上層の一番上の9階にいる。


 アデラとカースの騒ぎが起きたことで下層にいる魔人と亜人が群がってきた。まるで免疫細胞が外敵を排除するように反応している。



 下層の魔人は爪と牙の魔人がほとんどだった。それに武器を持った亜人と魔術を使う亜人の組み合わせだ。


 カースに近づく魔人達から斬り飛ばされる。


 カースは、覚醒していた。カースの剣は常に光を放ち、剣先が届いていなくても衝撃波で魔人を斬り伏せる。


 近づいては危ないと遠距離から魔法を撃とうとするも、詠唱している間に距離を詰めて斬られる。


 一匹倒すごとにカースの力はさらに上がっていく。


 魔人の食料として殺される人を見て、魔人におもちゃのように犯される少女を見て、カースは、全身から魔人を拒絶していた。魔人がいれば、人間は、絶望と死しか待っていない。そんな、世界を拒絶する力。魔剣士として、おそらく歴代最強になっている。


 そして、カースの妻であるアデラも、いつしか、カースと同じくらい人のために戦うようになっていた。


 アデラは、カースをフォローするように、カースのことを遠くから狙っている魔術師や背後に回り込もうとする魔人達を拳と蹴りで倒していく。


 ただ、一か所にいると範囲魔法を打ち込まれる可能性があるので、カースとアデラは常に動き回っていた。


 2人は何も合図を送らなくてもお互いの動きが分かる。


 下層にいる魔人と亜人は数時間のうちに倒されるか、中層に逃げるか、してしまった。


 驚いたのは城にいた人々だった。


 最終戦争から250年、魔人の支配は絶対だった。まさか、同じ人間が魔人を倒すことができるとは思っていなかった。


 裸にされた少女は、マントをぎゅっと持ちながら、涙を流してカースとアデラの方を見る。


 目が合うと、ペコリとお辞儀をする。


 カースとアデラはお互いの顔を見合わせて、一つ頷くと、中層へ行くための階段を上る。

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