決戦

町の放棄

 Aクラスの初陣から半年の間に魔人の迎撃回数は3回に上った。


 魔人の数は段々と増していき、3回目の襲撃は魔人17匹、亜人9人だった。


 この間にカースは魔人討伐数17になり、名実共に魔剣士となった。


 Aクラスの3人も、どうにか3人で2匹程度なら相手ができるようになっている。


 ただ、3回目の襲撃の時に町に被害が出た。


 打ち漏らした魔人が町に侵入、兵士10人を含む町民50人が死亡した。


 今後も町にいれば、被害が出ることは明らかだった。


 そこで、ガンツとナギ、そして執行部は町を放棄することにした。


 すでに、開発が進んでいる植民地への入植。


 次の襲撃までどれくらいの猶予があるのかも分からない。


 もし、魔人が1,000匹単位で襲ってくれば町は全滅以外考えられない。


 植民地は3か所、近い所は歩いで20日。遠い所は歩いて30日、町民は3か所ある植民地へ割り振られた。


 町からの避難の時間は1か月。


 今度は解放された人たちも、残留希望者も強制的に移ることになった。


 アデラは責任を感じていた。自分が家出をしたことで、町が一つなくなってしまうことになる。


 アデラが珍しく暗い顔をしているので、カースが声をかけた。


 「アデラが責任を感じることはないからね、これは戦争だから」


 「私はここに残る」


 「いや、そういうわけにはいかないよ、決定だからね」


 「いや、私は町の住民ではない」


 「住民ではなくても、俺の妻だからさ」


 「え?そうなのか?カース」


 「あ、ああ、もしアデラの気が変わっていなければだけど」


 「変わっていないぞ、カース、お前と結婚したい」


 「ああ、ただ、俺たちはちょっと魔人から目立ちすぎているよ、多分植民地には行けない」


 「そうか、カースと一緒なら野宿でも構わないぞ」


 「2人で逃げようか、どこか南の土地へ」


 「シロを連れて行ってもいいか?」


 「ああ、もちろんだよ、シロは家族だろ」


 「うん、なあ、人はこういう時、誓いのキスとかをするのではないのか?」


 「あ、うん、目を閉じてくれるかな」


 「こうか?」アデラは目を閉じてじっとしている。


 カースがアデラの肩を抱いて、不慣れなキスをする。


 2人ともボーっとなった、こういうことはお互いに初めてだったのだ。



 その夜、アデラとカースは町から逃げ出した。

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