町の風景

 一連の議論の間も、カースはアデラと修行を続けていた。メイもそれに加わっていた。


 アデラとカースの組手、カースとメイの模擬戦、アデラとメイの組手、それに投石を用いた修行。


 カースとメイはそれぞれに素振りと連撃の反復練習も行った。


 カースは魔人を既に4匹倒している。魔人の力を吸収した剣は持主にその力をフィードバックする。


 カースの剣は速く、重く、おそらくは、もう並の魔人では太刀打ちできなくなりつつあった。


 それでも、まだ、アデラとの組手では一本取ったことはない。アデラの強さについては、カースもメイも恐ろしく思うほどだった。


 遠征の時の戦い方を見てもそうだが、その速さと威力は底がしれない。さらに、まだ見せてはいないが、風魔法まで使える。


 アデラは、戦力としてはナギと同等か、それ以上なのではないかと思える。


 

 スーラは、町に戻ってから、すっかり解放された人たちのための先生になっている。


 言葉、文字、料理、魔法、全てスーラが教えていた。1人ではどうしようもないくらい時間が足りなかったが、補助者を2人つけることが、町の精一杯だった。


 解放された人たちは、昼は農作業、夜は授業を受けていた。少しずつ言葉も話せるようになってきた。


 子どもたちのためには、朝から授業をしてあげた。特に素質のある子には魔術も教えてあげていた。それまで何も知らなかったのだから、吸収するスピードも速い。



 元々の町の住民は遠征メンバーに対しても複雑な思いだった。町の分裂のきっかけになったからだ。しかし、解放された人々は遠征メンバーを見ると、いつも頭を下げていく。いくら感謝しても感謝しすぎることはないといった風だ。



 カースは、ほとんどアデラの家に泊まっていた。そこにはラーナもいた。


 アデラやメイといった女子が多くなったことで、ちょっと戸惑っているのかもしれない。


 メイがカースに気軽に声をかけていると、心配そうにそれを見る。


 大丈夫だから、と、カースがウインクをするが、それでも、不満そうだ。


 メイがそれに気づいてラーナに近づく。「ラーナの旦那さんを取ったりしないからね?」


 ラーナは真っ赤な顔をして、下を向いてしまう。


 色んなことはあったが、平和な日々が続いていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る