中央集落にて

町民会議

 砦攻略から2か月が過ぎた。


 この間、魔人との接触はない。


 全町民が集まり会議を行うことになった。解放された人たちも全員参加となった。


 ガンツが、町民会議の開会を宣言する。


 議題は、移民。


 2か月の間、町長のガンツやワンサウザントマスターのナギ、その他の執行部で毎日会議がなされていたが、結論としてこのまま町に残れば人類文明の火が消えてしまいかねないということだった。


 それは解放された人々を見れば痛いほど分かった。教育がなされない人には知性もなく、もちろん魔人と戦うこともできない。


 もし、今町が襲撃されれば、人類は永遠にその文明を失ってしまうであろう、それが執行部の結論だった。


 そこで、町民を3つに分けて、それぞれ新しい土地を探し、植民をするというのが今回の町民会議の議題であった。


 町民からは、執行部批判が噴出した。それならば、なぜ砦を攻めてわざわざ危ないことをしたのか。町がここまで発展するのにどれだけの年月がかかったと思っているのか、新しい植民地などみつかるのか、等々不満は数えきれなかった。


 執行部は、この町に残る者のリストも作っていたし、希望者は残れるとした。ただ、町民が気にしたのは、ナギの行方だ。現状ナギに守ってもらう以外に生き残る方法はないように思えた。


 町長のガンツとナギ、遠征メンバーは町に残ることになっていた。


 それを聞き、町民のうちの3分の1は町に残ることを希望し、3分の2にあたる3,500人は町からの離脱を決めた。町が魔人のターゲットになっている以上、いくらワンサウザントマスターがいても、残留は危険すぎた。


 解放された人々は、ナギや遠征メンバーのことを神のように考えており、町に残ることは当然と考えていた。



 町民会議から、2か月後、多くの食料と物資を持って、離脱派の人たちは町を後にした。

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