軍備再編

 中央集落は現在2.000名の住人だった。


 かつての中央集落は、兵隊と農民の区別はなく、農業をしながら兵役にも就いていたが、現在の中央集落は解放された人々が農業の中心となり、従来からの住民が兵役に服し、また農作業も手伝うといった兵農分離が進み始めていた。


 現在の兵力は1,000人ほど。


 町の執行部は兵力強化に乗り出した。


 魔術の素養のある少数の者はナギが教官を務め、剣に関してはカースとメイに教官役が回ってきた。弓やボウガンなどの遠距離攻撃系に関しては現在教官職がおらず、ゾックの死が尾を引いていた。


 兵力のほとんどは剣士のため、クラス制を敷き、Aクラス10名、Bクラス100名、Cクラス700名と想定した。


 Aクラスのメンバーのみカースとメイが教える。入れ替え制を取っており、半年に一回は入れ替わる。ただAクラスの10名は基本的には下のクラスに落ちることはない。


 Aクラスの選考基準は魔人と戦っても即死しない程度の実力を持つ者とされた。


 クラス分けをしてみると、いい動きをしている者はいるが、Aクラスの認定を与えられるものはいなかった。


 クラス分けの結果、Aクラスが0名、Bクラスが120名、Cクラスが693名となった。


 Aクラスが出なかったことに不満が出ることも考え、カースとメイが1,000人の兵士の前で模擬戦を行った。


 それまでの、兵士の技量とはレベルが違った。


 おそらく、カースもメイも兵士が10人がかりでも倒せないだろう。


 カースに至っては、魔人よりも恐ろしいほどの迫力を見せていた。


 そこにいた全員がこう思った。魔剣士カースだと。


 カースは日々の修行で物凄い筋肉がついていた。そもそも身長も175センチとやや大柄である。


 まだ16歳だが、その身にまとったオーラは遠目に見ても凄まじいものがある。


 メイもカースの剣を受け止めてはいるが、明らかにカースは本気を出していない。


 模擬戦は、15分程度で終わった。


 そこに居合わせた兵士全員から拍手が送られた。


 魔術は生まれ持っての才能だ、だからワンサウザントマスター、ナギを尊敬しても目指すものはほとんどいなかった。


 剣は、誰でも持つことができた、振ることもできる。だから、この場にいる誰もが、カースに憧れ、目指そうと思えた。


 魔剣士になるには10人の魔人を倒す必要がある、ここにいる全員が魔剣士になれば魔人を根絶することもできる。そんな、口にも出せないような淡い幻想。


 それが、カースという存在だった。

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