第47話 隠し玉

「なっ!?」


明神が胸を貫かれ息絶える。

クラスメート方を見ると、目つきの悪い奴が銃を構えていた。

その砲頭からは煙の様な物が上がっている。


「攻撃を武器で受けるのもダメな様だな……ああ、俺はガンナーってクラスだぜ」


聞いた事のないクラスだ。

しかし永久コンボで動けなかったとはいえ、高そうな鎧を身に着けていた明神の胸元を一撃で抉っている。

その火力はかなり高そうだ。


「なんで明神を殺した?」


「あん、動けない奴生かしてても邪魔なだけだろ?」


だからって仲間を迷わず撃ち殺すか?

まあ蘇生前提なのだろうが、普通はもっと躊躇う物だと思うんだが。

他の奴らを見るが、全員特に興味なしと言った面持ちだった。

この様子じゃ、誰かを殺して動揺を誘うといった手は通用しないだろう。


「さて、じゃあ次は俺が相手をしてやるよ」


ガンナーが前に出る。

また一対一で俺と勝負する気の様だ。。


「明神を倒した俺と、一対一でやるつもりか?」


「今のは、挑発に乗ってお前の攻撃を受けた明神が間抜けだっただけだろ?」


まあそうなんだが……


個人的には一斉にかかって来てくれた方が有難かった。

それならダメージ無効を利用し、自爆特攻ぎみに水入りの革袋を使って一気に永久コンボを発動させられるからだ。

正直、ちまちま来られる方が困る。


「大体明神の奴、一々リーダー風吹かしてしてウザかったんだよな。言いざまだぜ。なあ、こいつ生き返らさねぇでほっとかねぇか?」


その言葉に、他のクラスメートがクスクス笑う。

ちょっとしたブラックジョーク何だろうが、俺には全然笑えなかった。

やっぱこいつ等とは合わないなと、再認識させられる。


「はっ!」


横を向いて笑っているガンナーの体に、投げナイフを投擲する。

だが奴の手にする銃によって、ナイフは跡形もなく消滅させられてしまう。


まあ不意打ちが目的ではないので別に構わない。

今のは、ガンナーの持つ銃の性能を見極める為に投げただけだからな。

どうやら奴の銃は鉛ではなく、エネルギーの塊を打ち出している様だ。


「不意打ちとか、せこい手使うじゃねーか」


「こっちは村人なんだ。それ位見逃してくれよ」


奴の獲物の銃口が俺に向けられる。

この距離なら、まあ連射されてもまず当たる事は無いだろう。


問題はスキルだ。

特殊クラスである以上、ただ銃を撃つだけって事は無いはず。

少なくとも、軌道を曲げる事くらいはしてくるだろう。


「悪いが明神みたいな間抜けを晒す気はないんでな。サクッと手足を撃ち抜かせて貰うぜ」


そう言うと、ガンナーが銃を連射する。

全部で六発。

俺はそれを横に大きく飛んで躱した。


「逃がすかよ!」


奴が叫ぶと弾丸が大きく弧を描いて軌道を変え、俺に迫る。

予想通りだ。


しかし声でそれを宣言するとか……こいつ馬鹿なんじゃねーの?


相手が気づいてなければそれで終わったかもしれないのに、わざわざ何かありますよと宣言する辺り、オツムのレベルは明神と大差ない様だ。


「ちぃっ!村人の癖に」


再度躱して避けると、弾丸は壁に穴を開けて消滅する。

どうやら曲げられるのは一度だけの様だ。


いや、そう判断するのは早いか。

ガンナーはあほっぽいが、ふりの可能性もある。

一度だけと勘違いさせて、油断した所に……というのも十分あり得るだろう。


「じゃあこいつはどうだ!E!B!」


再びガンナーが銃を連射する。

EBと叫んでいる辺り何らかのスキルと取れるが、飛んでくるエネルギー弾にさっきと変わった様子は見当たらない。


喰らって確かめるつもりなど更々無いので、俺はそれを避け――


「ぐっ!?」


油断した。

弾丸が突然弾け、俺の傍で爆破する。

最小の動きで躱そうとしていたため、俺はもろに爆風で吹き飛ばされてしまった。


EBってのは炸裂弾――エクスプロージョン・バレット?――の略だった様だ

ったく……頭文字読みで格好つけずに、もっと分かり易く言えよな。


「ビンゴ!」


攻撃が入ったのが嬉しいのかったのか、ガンナーがちょっとしたダンスを踊りだす。

俺の虚を突いた今こそ最大の攻撃のチャンスだと言うのに、それを自己満足の踊りで潰すとか……うん、こいつも間違いなく明神級の馬鹿だ。


「気持ちよく踊ってるところ悪いが!」


体は痛むが、再起不能には程遠い。

素早く起き上った俺は、一気に間合いを詰める。


「ちっ!寝てろよ!」


ガンナーは俺を迎え撃とうと素早く銃を乱射するが、奴の攻撃を躱しながら間合いを詰める。

弾丸は次々爆発するが、想定して大きめに避けているので問題ない。

俺はそのまま一気に奴の喉元に迫る。


「もらった!」


間合いに入った瞬間、剣を薙ぐ。

弾丸はともかく、ガンナーの動きは遅い。

これで決まりだ。


「へへっ!」


だが剣が奴を切り裂く直前にその姿が消え、俺の一撃が空を切る。


「!?」


なんだ?

まさか瞬間移動か!?


「横だよ。ばーか」


声の方を見ると、すぐ近くでガンナーが銃を撃つのが見えた。

超至近距離。

しかも体勢が悪い。

どう考えても躱すのは無理だ。


これで一回消費……そう考えたがのだが――


目の前で奴の弾丸が消え、そしてガンナーの腹部に大きな風穴があく。


「が……あぁ……俺が村人……如きに……」


奴は血を吐き、こと切れる。

まあそれはいい。

蘇生があるし。


問題は――


「俺が合図するまで寝てろつっただろ」


「ぱぱー」


俺の鎧の胸元にでかでかと穴が開き、そこからバンシーが輝く笑顔を向ける。

彼女の事は奥の手として取っておくつもりだったが、まあいいか。

スキル一回分節約できたしな。


しかし……相手の油断もあったとは思うが、異世界人の強力な攻撃を掻き消し更に一発で殺してしまうあたり、流石Sランクモンスターだけはあると感心せざる得ない。


「なによそれ!?」


「こいつか?こいつは俺の相棒だ」


何かは教えない。

バンシーだと分かると、先に呪い対策されてしまうからな。

まあこいつらクラスを行動不能に出来るとは思えないが――レジストや耐性から――それでもわざわざ此方の手の内を晒す気はない。


「さて、残りは6人だな」


俺はそう呟くと不敵に笑う。


「調子にのるな!」


俺の言葉に茶髪の聖女が吠えた。


流石に、明神に続いてガンナーまで――名乗らなかったし、結局名前は不明のまま――やられるとは思っていなかったのだろう。

クラスメート達の顔に、もはや余裕の表情はない。

それぞれが武器を手に此方を睨み付けている。


流石にもう一対一はないだろう。

なら、纏めて一気に永久コンボを発動させるチャンスだ。

上手く纏まってくれると有難いんだが……

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