第46話 オーラ

「ちっ!弾くバッシュ!」


「くっ!」


明神の使ったスキルの効果で、俺の体が後方へと吹き飛ばされる。

どうやら今使ったのは、強制的に相手を吹き飛ばすスキルの様だ。


「村人如きが!俺の剣を受けてんじゃねぇ!」


奴は苛立たし気に吠え、見ていたクラスメート達は驚いた様な表情を作る。

明神の一撃は重い物だった。

まさか村人の俺が、その一撃を正面から受け止めきるとは誰も思っていなかったのだろう。


しかし――思った程ではない。

今の一撃が受け止められないレベルだったら少々ヤバかったが、これならどうとでもなりそうだ。


「勇者の割に大した事ねーな」


明神を挑発する。

まずはこいつの動きを止めるとしよう。


「殺す!」


明神が顔を真っ赤にして突っ込んでくる。

他の奴らはまだ俺の事を舐めているのか、動こうとしない。

もしくは奴を捨て駒にして此方の様子を見てるかだが……まあどちらにせよやり易くて助かる。


「はぁっ!」


今度は受けず、俺も剣を振るう。

さっきのは防御であるため永久コンボは発動しなかったが、今度は違う。

奴の剣に俺の剣を攻撃として叩き込んだ。


ギリャッと鈍い音が響き、剣と剣がぶつかりあった。

まずは一人目を――なにっ!?

思わず驚きに目を見開いた。


何故なら、永久コンボが発動しなかったからだ。

確かに攻撃は奴の剣に入った。

それは間違いない……なのにいったい何故?


「おらぁ!パワースラッシュ!」


「くっ!?」


驚きに体が硬直してしまい、その隙にスキルを使った2撃目を叩き込まれてしまう。

それを辛うじて防ぐ事は出来たが、強く弾き飛ばされ腕が痺れる。


「逃がすかぁ!オラオラオラオラ!」


明神が一瞬で間合いを詰め、容赦なく連撃を放つ。

スキルの乗ったその斬撃は、先程の非ではない程のパワーを秘めていた。

俺はそれを何とか凌ぎつつ、隙を見て反撃を叩き込む。


「はっ!そんなしょぼい一撃喰らっかよ」


明神が俺の剣を軽々と受け止める。

だがやはり永久コンボは発動しない。


「くそっ!」


このまま打ち合いを続ければ押し切られると判断した俺は、後ろに飛んで大きく間合いを離した。

まさかスキルが発動しないとは……このままじゃ不味い。


「へっ!ちったぁ勇者様の実力が分かったかよ!」


俺を押しまくれて少しは溜飲が下がったのか、奴は偉そうに胸を張り、剣で肩をトントンと叩く。

奴が戦いの最中に余裕を見せる馬鹿で助かる。

お陰でこっちは奴の様子をじっくりと眺める事が出来た。


「明神。全身を覆うその光?ひょっとして勇者の力か?」


日の光で分かり少々辛いが、奴の全身を薄っすらと光が包んでいる事に気づく。

それは体だけではなく、奴の身に着けている武具も覆っていた。


「ああ、これか?これはオーラってスキルだ。防御力や武具の耐久力を上げる勇者だけのスキルさ。村人のお前じゃ、どう頑張っても手に入らねー力だぜ」


それを聞いてピンとくる。

恐らくそのオーラで出来た被膜がクッションとなり、俺の斬撃が奴の剣にまで届いていないのだと。

だから剣で攻撃しても、永久コンボが発動しなかった。


永久コンボを通すには、奴の身に纏っているオーラを貫くしかないだろう。

だが半端な攻撃では弾かれてしまう。

どうやら、全力の一撃を叩き込む必要がある様だ。


「明神。お前の強さはよく分かったぜ。流石勇者だ」


「あん?土下座する気にでもなったのかよ?」


「村人相手に、勇者が本気を出すなんて大人げないだろ?せめて1ハンデに5秒くれよ。それともまさか、俺に攻撃されるのが怖いとは……いわないよな?」


今までの攻撃は当てる事を重視した物だったため、その一撃は軽かった。

だがあの調子で攻められたら、本気の一撃を打ち込む隙は無いだろう。


だから挑発する。


調子に乗って、俺の全力の一撃を受け止めてくれる様に。

こいつならきっと乗ってくれるはずだ。


「はっ!あわよくば俺に攻撃を当ててスキルを発動させようって腹か?良いぜ、ハンデをくれたやるよ。この勇者様がな!」


アホで本当に良かった。

気になるのは他のクラスメートの動向だが、彼らは一切動く様子がない。

強力なスキルを持っていても、所詮村人など明神一人で十分と判断しているのだろう。


これまた非常に助かる。


「じゃあ受けてみな!」


間合いを一気に詰める。

そして踏み込みの勢いと共に、渾身の一撃を振り下ろした。


明神は、その一撃を剣を水平にして受け止めた。

剣と剣が激しくぶつかりあい。

ギンっと、今までとは違うかん高い音が響く。


「当たんねーっての!」


「いいや、当たったぜ!」


俺はそのまま明神を蹴り飛ばす。

奴はなすすべもなく吹っ飛び倒れた。


「ぐ……なんだ……体が動かねぇ……」


「そこで寝てろ!」


まずは一人目――そう思った瞬間、倒れている明神の胸の中心を何かが貫いた。

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