第12話 ~愛、想い、恋、焦がれ~着港、アルドローグ
レイと合流して更に船に揺られること、3週間ほど。一行はようやくアルドローグの大地に降り立った。
「わあっ!! 見たことないものばかり!!」
サリュナは生まれて初めての異大陸に興奮冷めやらぬ様子だ。
建物も、露店で売られている食べ物や雑貨も……どれもが初めてで、好奇心を刺激される。
――カルハジェルにも、見せてあげたかったな……
ふと、愛しい夫の事を思い返す。
――あれから結構経ったけれど、体調崩したりしていないかしら。きっと私の事を探してくれてるわね……
思いあぐねているうち、自分が死んだと判断されている可能性に思い当たり一瞬恐ろしくなったが、
――きっと大丈夫、カルハジェルは私を信じて待っていてくれる!!だから……一刻も早く元の体に戻らなきゃ!!
必死に自分にそう言い聞かせた。
「サリュナ?どうした?ボーッとして。」
トーヴァンの声に我に返る。
「ご、ごめんなさい。あまりにも珍しいものが沢山あるから……その……カルハジェルにも見せてあげたかったな、って。」
「カルハジェルって、もしかしてサリュナさんの旦那様ですかあ?」
レイもすかさず会話に参加。
「そうよ。とっても優しくて、紳士的で、カッコいいんだから!!」
ふふっ、と笑いながらサリュナが応える。
――とっても優しくて、紳士的で、カッコいい、か。
ほんの一瞬、トーヴァンが見せた表情に気付くものはおらず。
「わああ、羨ましいですう!! 私もそんな素敵な旦那様が欲しいなあ!!」
「レイさんは好きな人とか、いないの?」
レイは猫に似たその顔に照れた表情を浮かべ。
「昔、故郷にいましたけど。きっともう私の事なんて忘れてますう。結構長いこと旅してましたし。」
「そうなのね。今でもその人のこと…?」
「えへへ、実はそうなんですよ。わたしが旅に出たもう一つの理由でもあるんですう。私、彼と向き合うのが怖くて、逃げたんですう。今思えば、ちゃんと向き合うべきだったんですけど。」
「まだ好きなら、諦めちゃダメよ!!」
「は、はいぃ……ザルドローグに帰ったら、彼を探してみますう。」
「その意気!! その意気!!」
「……2人とも、盛り上がるのはいいけど、そろそろ出発していいかな?」
サリュナとレイの話に若干着いていきそびれたトーヴァンが割って入る。
「あ、ごめんなさい」
「はーい、行きましょう」
各人各様の返事をし、2人はトーヴァンに続く。
「レイさん、必要な物資の買い出しに付き合ってくれないかな。ザルドローグに向かうなら、ここからは砂漠越えだ。僕も砂漠は初めてだからね、君の意見が欲しい。サリュナもついておいで!1人だと危ないからね」
そう、今いる港町ベリルコートは、アルドローグ大陸の玄関口にして、アルドローグ北部に広がるファザリア大平原と南部のザルディア砂漠地帯との境目にあった。
そして、ザルドローグはザルディア砂漠で最も巨大なオアシスを利用した城塞都市だ。ベリルコートから見て砂漠の奥の方にあり、途中幾つかあるオアシスの集落を辿りながら向かうことになる。言うまでもなく砂漠越えは過酷だ。しっかり準備しなければ。
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