第5話 面接

「僕、勇者に・・・無理だよね」




僕は小声でそう言った。誰から見ても勇者は日本人形のようにお上品な僕には到底似合わない言葉だと思う。




「明日の試験も頑張らなきゃ」




僕はそう言いながら電気を消しベッドにダイブしてそのまま寝た。






朝になり小鳥のさえずる声が聞こえる。




「セイナ、今日も頑張ってね」




朝飯を終え、身支度をし扉を開く。




「うん、行ってきます」




僕は母に向かって笑顔で顔をほんの少し横に曲げ、家を出た。


女の子ってやっぱり身だしなみが大変なんだな・・・


そう思いながら学校の方を目指す。




「アユさん、一緒に着いてきてくれてありがとう」




僕はアユさんの手を握って笑顔でそう伝える。




「いえいえ、お嬢様に何かあればと思うと当然でございます。今日も帰りは御一緒できませんが、なるべく人気の多い道からお帰りください」




そこまでしなくたってこの国の人達は良い人ばかりなんだよね。それに僕が帰る時は村の人達みんな出迎えてくれるし




***




僕はそう思いながら学校の門を潜る。案内に従って広い部屋に入ると第二試験である面接の説明が今しがた始まろうとしていた。中には椅子が並んでいて受験生達が座っている。


「おい、マーレ家のお嬢だぜ。やべぇすげぇ可愛いな」


「何で十歳も満たなさそうな女の子に発情してんだこいつって奴は・・・ま可愛いけどさ」


「ていうかあの子まだめちゃくちゃ幼いわよね・・・どうやって一次受かったの・・・?」


そんな風なヒソヒソ声が至る所から色々と聞こえる。僕もそうなったら急に取り繕ったかのように清楚で上品な雰囲気を醸し出して見せる。




「お、セイナー!こっち来いよ!」




「あ、レナさーn・・・じゃなかった。御機嫌ようレナさん」




声の主はレナさんだった。僕は姿勢良く手を前に出しお辞儀をしてみせる。長いこと会社に務めていただけあって姿勢や礼儀『だけ』は本当に正しいことを実感する。




「んなに固くしなくて大丈夫だって。それに本当はそうゆうキャラでも無さそうだし」




レナさんは膝を曲げ視線を落とし、じとっした目で僕を見つめる。顔が近くてもつい照れてしまう。




「あ・・・まぁ、そうです、はい・・・」




そうした会話をしていると説明が始まる。僕はレナさんの横に座った。




「あー、こほん。今日は面接だ。ここで落ちるような人は多分いないと思うけど一応みんな気張って行くように」




スーツを着た男性がそう言った。ひそひそ声でレナさんが声をかけてくる。




「それで、あんた志望動機ってのは決まったか?」




「はい、一応決まりました・・・」




僕の自信なさげな声を聞いてレナさんは笑顔で答える。




「お、そうか。んで、何でなんだ」




僕はレナさんの顔を見ずに答える




「えっと・・・ちょっと今は・・・」




レナさんはそれを聞いて少し驚いてこちらの目を見つめ返すがすぐにいつもの軽い雰囲気に戻る。




「ふふ、そうか」




軽く笑いながらそう言う。僕はレナさんに同じように質問をする。




「えっと・・・レナさんは志望動機考えてきたんですか・・・?」




「あぁ、俺?俺は──────」




そう言いかけた所でレナさんが面接に呼ばれる。




「お、んじゃ行くわ」




レナさんは面接室に向かって行った。

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