第4話 困ったこと

志望動機かー・・・考えたことも無かったな。こっちの世界に来てからずっと箱入り娘だったし




「そういえば僕には『アビリティ』の事とか『ベース』のこととかは何故教えて下さらなかったのですか?」




「ごめんね、あなたのお父さんがいたなら教えないようにしてただろって思って。それについては悪いことはしたわ」




僕は夕飯を母と一緒に食べながら志望動機について考えていた。




「ねぇお母さん。困ってることはないですか?」




僕は拳に頬ずえを着いて顔を斜めにして聞いてみせる。




「あら突然。んー、困ってる事ねぇ。なかなかお父さんが帰って来れないことかな」




そう言えばお父さんって何で帰ってこれないんだろう・・・?


母は話を続けた。




「この世界にはね、悪い魔物がいるの。それを束ねる魔王ってのがいる限り少なからず苦しんでる人がいる。お父さんは魔王を倒しに行ったっきり」




母は少し俯きながら僕に話してみせる。その表情はどこか物悲しさを物語っている。




「そう・・・なんですか。お母さん・・・」




「あ、もう。悲しい話は終わりー! とりあえず今日はゆっくりおやすみ、セイナ」




そう言うと母は食器を漬けて書斎部屋に入っていく。




僕も部屋に戻って自分のベッドに横になる。




そういえば魔王に関する本があったような・・・




本棚から資料を探し出し開けた。




どれだけの時間が経っただろうか。読み進めていくとそこには信じられないようなことが書いてあった。




「魔王を倒すと・・・何でも一つ願いが叶う・・・?」




その記述に半信半疑ながらも一つの考えが脳裏を過る。




「お父さんに帰ってきてもらうことだってできるし・・・」




そうだ、僕ならできる。




「それにお母さんだって困ってるもんね・・・」




僕はベッドで横になりながら背中を丸めぐっと拳を握った。

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