第3話 もう終わっている

ピエロが待っている所までスタスタと歩いて向かっていく。レナさんは終始余裕そうな表情を浮かべていた。ピエロが言葉を発する。




「余裕だね〜、さぁどこからで───「もう終わってるよ」




そう言いながらレナは前髪で目を隠しふっと笑う。レナは手のひらを見せ、その中にある手袋をプラプラと指で摘んで見せる。」




「な・・・!僕の手袋・・・!?外れているいつの間に・・・」




ピエロが自分の手を見ると確かに手袋が外れている。




「もう良いだろ」




レナさんはその手袋を丸めるように縛りピエロに返す。




「あぁ、合格!!!」




そう大声で言うとまた歓声が上がった。その光景に誰もが驚いている様子だった。




「レナさん・・・!?あのピエロからどうやって手袋を・・・!?」




するとレナさんは『んー』と一呼吸起き一言発する。




「ま、秘密ってことで」




そうニカッと笑うレナさんに僕は思わずぷくっと頬を膨らませ教えてもらうようにせがむ。どうやら教えてくれる様子は無さそうだ。


そうして試験は終わった。この体育館での合格者は僕とレナさんだけらしい。




「二人共素晴らしいというか・・・まぁ得体がしれない感じだね」




そう冷汗をかいているピエロが僕達に話しかけてくる。




「そうだ、面接等の試験も控えてるから志望動機とかまとめておくんだよー」




そう言うとピエロはくるっとバク転をし、煙と共にどこかへ消えてしまった。




「志望動機か・・・」




僕は少しその言葉に対して考えてしまう。この世界で何を目的に生きてるのかがわからないでいたからだ。レナさんは軽い口調で話しかけてくる。




「名家の跡取りなんだしマーレ家に恥じないやらなんやら答えときゃ良いんじゃねーの? それより俺の方が困ったもんだぜ」




「あ、まぁそうなんですけど・・・ ちなみにレナさんは何でこの学校に・・・?」




「ん、まー適当だよな。ここって実力主義だし俺なんかでも入れるかなーって」




そう言われると僕は少し俯いたがそれに合わせてレナさんはさっと手を出し握手を求めてくれる。




「ま、お互い入学式でまた会おうぜ」




ニカッと笑いながらそう言ってくれるレナさんの手に握手を返す。その手はとても暖かい。




「はい、ありがとうございます」




僕も笑みを浮かべながら言葉を返した。


帰る頃にはもう日が暮れていた。僕は扉を開け、家に入る。




「ただいまです、第一試験受かりましたよ!」




そう言うと母は驚いた顔を浮かべている。当たり前だ。母でさえ何度も落ちている学校の第一試験に合格したのだから。




「嘘・・・!?あんなに外にも出てなかったのになんで・・・」




母は僕の肩を持ってぶんぶん揺らしてくる。僕は目眩がしそうになる。




「夕飯にしますか」




そう言うとメイドさんが階段から降りてくる。どうやらこの家の専属メイドらしい。幼い頃からずっとお世話をしてくれている。綺麗な金色の髪で僕から見てもレナさんより身長が少し高いように見える。




「えぇ、お願いするわアユ。にしてもセイナ、本当におめでとう。凄いわね」




そう言うと僕の頭を優しく母が撫でる。それを横目に見たメイドのアユさんも口元が緩くなる。

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