第2話 大和撫子セイナ・マーレ転生


 あれから八年が経った。僕は八歳になったらしい。それに一つ気づいたことがある。




「僕、完全に女の子になっちゃってるよね」




自分の部屋の鏡を見ながら独り言を発する。黒髪ロングの前髪は綺麗に整っている。人形のような綺麗な顔立ちの大和撫子と言った所だろうか。親にはそれに合った綺麗な黒い着物のようなものを着せてもらっている。こんなものまで買う事ができるなんてどうやら本当にお金には困っていないらしい。この村は何軒もの石で出来た民家が並んでいる。僕の家はその中でも一際大きい屋敷と言った所だろうか。今僕のいる国は一帯が壁や柵に守られている。小さい頃に聞いた話では外は魔物がいて危険だとか。その中に色んな街や村があって生活に不自由することも無く暮らすことができた。だが母によると父は外に行ってしまって帰ってきていないらしい。


こちらの世界でいえば西洋っぽい・・・なんていうかこれもありきたりな異世界転生って奴だよね




「セイナ、大丈夫?最近外出てないわよね」




そう言っで扉を開いたのは今の僕の母親である。セイナというのはここでの僕の名前だ。母親はる凄くお淑やかな雰囲気を漂わせている。だが髪色は両親とも金色で顔立ちは似ても似つかない。遺伝子の突然変異として村では扱われている。




「あ、はい。家から出てもきっと他の人に避けられちゃうと思うので───」




困り笑顔を浮かべながら僕はそう言った。どうやらこの村の人間に黒髪は居ないそうで同年代からはどこか避けられている節があったのだ。




「そっか・・・じゃあまた来るわね」




母親は部屋から出ていった。僕はゆっくりと外を眺める。どうやら明日から学校の試験があるようだ。この国の学校自体は少ないのだけど、そこは僕の家系が代々入学してきた学校で、その試験のレベルは高く家系の中で優秀な母でさえ三回試験に落ちてようやく入れたらしい。だから何回も試験を経験させる為に幼い頃から受験をさせるらしい。どうやら母は僕が家から出ない事を心配しているのは、その試験には体術等の運動能力も必要になるからだろう。座学は家でも学べたが体術が問題だ。




「僕の能力じゃちょっと厳しいかなぁ試験。でもも今の家族の為に頑張らなくっちゃね・・・」




***


 


 試験当日を迎えた。どんどん各地方から学校に試験を受けにやってくる受験生がいる。その学校は学校というよりもはやお城と言った感じだった。




「わぁ、これじゃ学校というより大学だよね」




そう言いながら僕は学校に入っていく。入った瞬間その艶やかな髪と凛とした雰囲気は周りの目を奪う。そんな周りの人間の中に一際別の雰囲気を漂わせた人間が居た。




「なぁ、お前マーレんちの一人娘だろ。噂は聞いてるぜ。にしても髪色本当に真っ黒なんだな、俺も黒髪は見たことねぇしすげぇんだな」




そう話しかけてきたのはまるで盗賊のような野性的な格好に茶色の髪を後ろで括っている身長が百六十センチぐらいある女の子だった。目は真っ直ぐこっちを見ていて美しい色をしている。


うわぁ何か怖いけど綺麗な人だな・・・


と心の中で呟きながら僕は直ぐにそれに応じる。




「え、えぇ。 ぼ・・・いや私はセイナ・マーレ。マーレ家の一人娘よ」




思いっきり取り繕ってそれっぽい雰囲気を僕は醸してみせる。その表情を凝視されるが僕は動じないようにふと笑いながら前を向いている。




「んー、そうか。俺はレナ。まぁとにかく今日は頑張ろうな」




そう笑顔で僕に言ってくれた。どうやら見た目に反して良い人みたいだ。


僕はその学校の中に入り案内に従ってある一室の部屋に足を運ぶ。そこは体育館のように広くまるで何も無い。受験者が数十人集まっていてその先にたった一人立たずんでいる道化というかどう見てもピエロがいた。




「やあ諸君、早速だが受験に集まって貰ったのは本当に膨大な数の人間だ。日を分けて更に場所を分けてこうして今集まってもらっている。とにかく今から行う試験は数を減らす為に行うと思ってもらって構わない、その為に必要最低限の体術を測る、ここにいる受験者達と面接官とで勝負してもらうよ。じゃあ受験番号順に僕と戦ってもらうから」




そうピエロが言うと一人の受験生が前に出た腕に何やらオーラのようなものを貯めているように見える。


何なんだろう・・・あれ


そう思いながらその光景を見ているとその受験生の腕が着火した。




「え・・・!?」




どうやら僕一人のみがその光景に驚いていた。すると隣からレナが話しかけてくる。




「おいおい何驚いてたんだよ、あーゆうのって見たことないか?」




いや、あれってどう見てもジャ○プとかでよく見る能力的な奴だよね・・・


そう思いながら僕は首を横に振る。




「ったく。んなことも知らねーとやべーぞ、はは。しゃーない、俺が教えてやるよ。あれは『ベース』って言って自分の中にあるエネルギーだ。それを溜めて体外に放出すれば何か『アビリティ』が出せるって訳だ。まぁ人によって得手不得手があるからあんな火を付けたりとかは俺はできねーけど」




そうレナさんが説明している間にもピエロと受験生との勝負が繰り広げられる。




「んー、 アビリティは良いものを持っているんだけど如何せんベースの流れが悪いね」




そう言いながらその火を纏った拳をいとも簡単に体術で捌く。


すご・・・まるで少年漫画だ・・・


そう思いながら僕はその光景に目を光らせていた。


何人かの受験生が戦いを終えた。




「次、二千三百五十番!セイナ・マーレ!」




「え、 ぼぼぼぼ僕!?」




そう言うと僕の足がガクガク震え出した。経験の無いベースとアビリティを使った戦いに足が震える。




「ほら、行ってこいよ。まぁ今年のお前じゃちょっとこの手の体術は厳しいかもしれねーけど、とにかく精一杯やってこいっ」




そう言いながらレナさんは笑って僕の背中を押す。僕は汗をタラタラ流しながら前に出ていく。


どうしよ、やばいよー・・・




「知っているよ。毎年あなたのご家系は親からベースやアビリティの存在を教えないようにしている、身を持って体験するのが一番良いって風に」




ああ、そうゆうことだったんだ・・・




「ごめんね」




そう言いながらピエロは一撃目をうなじに回り込み叩き込む。




「あ・・・れ・・・痛くない」




ピエロはその光景に困惑を隠せないでいるように見える。




「ん・・・僕の腕からベースが一切流れてないね これはまさか・・・」




ピエロは俯きながら考える。




「えっと・・・どうしましたか・・・?」




するとすっと顔を上げ、こちらを指差し一言発した。




「うん、合格・・・!!」




すると周りから拍手が上がる。どうやら僕はこの試験に合格できたみたいだ。僕は笑顔になり後ろにいるレナさんの元まで行く。




「お、おいおい。合格しちまったのか信じらんねぇ・・・」




「はい!何だか分からないけど良かったです」




これで待っている家族にも報告ができる


そう思いぐっと拳を握って喜ぶ。




「二千三百五十一番!レナ・ペンタグラム」




そう言われるとレナさんは小声で『うっし』と呟き前に出る。




「あの、レナさん頑張ってください!」




そう僕が言うとレナさんは少し笑ってこちらを見た。

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