俺は人間を辞めるぞおおお!
そして結構な時間が経った。
僕は相変わらず落ち込んではいたが、結局消えることはなかった。
しかし、この何も無い白い空間にいると別の意味で落ち込んでくる。
「ネットを眺め続けるのにも飽きたなあ…」
そう、誰とも喋ることの無い生活というものは、中々に神経を削ってくる。
飲み食いといった他に楽しめそうな要素も限られる中で、鬱屈とした感情がどんどん増してくるのだ。
幸い、ブロックされる前に、本物の自分のメールアカウントから、Googleアカウントを作成することができた。
Googleアカウントさえ作れてしまえば、ケータイの電話番号が無くても大抵のアカウントは作成できる。
新たにTwitterのアカウントも手に入れ、不自由のないインターネット環境は整えられていた。
「でもやっぱり、人と喋ることができないのはストレスがたまる…」
元々、僕は人と話すのが好きな方だったので、こういった完全なひきこもり生活には向いていなかったのだった。
自分が偽物だというショックは未だに引きずっていたが、今はそっちのストレスの方が勝るようになってきた。
「人と喋れるようになりたいなあ…」
Twitterで仲良くなった人とSkypeするようになったり、ゲームとかやってると、ボイスチャットを使って一緒にゲームをしたりするなんてことは聞いていたが、実際自分はしたことはなかった。
「Twitterで今から仲良くなれる人を見つけに行くのもなあ…」
こっちと違って向こうにも用事があるだろうし、ずっと付き合ってもらうわけにもいかないだろう。
本物の自分が仲の良かった相手に話しかけるなんてことも当然できない。
「いっそのことツイキャスでもするか…?でも人気ないとできないしなあ……ん?」
ふと、自分の趣味の一つを思い出した。
「VTuberに自分がなるってどうだ…?」
VTuberとは、身も蓋もないことを言ってしまえば、アニメ絵のキャラクターがYoutube上でリスナーとコミュニケーションをとるという、それだけのものだ。
しかし、顔出しをしなくて済む。実際のアニメみたいに映像を自由に演出できる。実際の人間とはまた違った距離感が生まれる。アニメと違ってコミュニケーションが取れる。など、普通のYoutuberやアニメとはまた違った可能性を秘め、年々人気を得ている。
元々、僕はYoutubeはよく見る方で、特にVTuberは出てきだしたころから追っかけていた。
アニメをよく見ていたこともあって、2Dの絵が喋って動くことには何の抵抗もなく、むしろ生身の人間よりも映像が凝ることのできるポイントが特に好きだった。
「VTuber人口って今1万人超えてるし、もしかして簡単になれるんじゃ…?」
もはや今は友達を作りたくてVTuberになる時代だ。
顔を見せずにロールプレイングをしたり、一緒にゲームをしたりすることが楽しくて気軽にVTuberになる人もいるという。
それに、自分の顔を見せなくて良い点は、本物の僕に見つかったときにトラブルにもなりにくい。
コラボが醍醐味のVTuberの文化はまさに僕にとっての救いのようにも思えた。
「この2次元の絵が自分だと認識してもらえる!僕が偽物でもなく、まさに画面の中に生きる存在だと認識してもらえる!僕はもう偽物じゃない!僕は僕だ…!僕はもう人間じゃない!」
「僕は今日から、VTuberだ!!!」
人と関れそうな期待、偽物という呪縛から逃れられそうな期待が、僕を一気に元気づける。
もはや消えてなくなるんじゃないかという不安は、もうどこにも存在しなかった。
そんな期待に胸を膨らませたとき、デスクトップ画面に一つの通知が表示された。
「一定以上の感情数値を観測。AIプログラムがアンロックされました。」
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