第2話 契約

マグラスラックは、一瞬、言葉が出なくなった。膨大に過ぎるーーそれこそ、人間が一瞥するだけで発狂する程の叡智を誇る、大いなる存在の知性が一瞬、


 この人間の言葉にこれっぽちも嘲りや欺瞞の気配がなかったことも、その現象に拍車をかけていた。


 『...Wha̷̮̠̻t̜̞̦?̞̜』


 神の如き力を持った上位者をして、思わず聞き返してしまう程の戯言。意味が分からん、いや、分かりたくもない、と古き存在は朧気に思った。


 『|h̞͎é̪r̴͎̳̫e͓̪̜͉̗͘ ͈̬͕̻̯ͅe͔̟x̞̳̹a̭͉c̙̟̼t̘͚lͅy̛̻ ̡̜̪̼͚͚͕ḍ̜ǫ̖̞ ̮͍͡ò̤̣̟̩̠u͙͟ t̵͔͇̥ͅh͍͙̠̻ṋk̸̼̫̳̻͖̰ ̪͉̫y̨o͝u ͚a̡̭r̗͟,͙͇ ̥͎̮̞̥̬͚͟J̞̳̤ͅǫe̮̦ ̞́M̪͙̥̼̥͘ul̰͎̬̺̟l̺͍̳i͇͙͇̭̖̞g͉͠a̜̗͓̻ṇ̢̝̞͕̭̣̭(ジョー・マリガン、何処に居ると思っている)?』


 「ハハッ。」 とジョーは苦笑した。流石に状況を理解したのか、または出会いを諦めたのか(上位者の勘が後者だと告げている)、ジョーは砕けた口調で話し始めた。


 「なあ、聞いてくれ。これ以上続ける前に、特殊効果の音量を下げてくれないか?最初はとても印象的だったけど、今では少し耳障りな感じがするんだ。こう、ギーンと耳奥に響く感じで。」


 監視者オブザーバーはこの些細な要求を考慮した。マグラスラックは、この奇妙な人物がどのようにして彼の周りで起こった恐ろしい出来事に、のかを知りたいと思ったのだ。


 一つの選択肢は、彼の思考を直接観察して解剖することだったが、人間の心は壊れやすく、何か役に立つものが得られる前に砕け散りやすいものであったために断念した。


 または、より穏やかで繊細な精神操作を使用することも可能であったが、会話の方がはるかに少ない時間と労力で済むため、話をすることにしたのだ。


 それゆえに、マグラスラックはこの矮小な生物の要求を受け入れることにした。大きな目の一つが口のように開き、針のような歯が生え出でた。


 『よろしい、ジョー・マリガン。』


 その深い声が部屋中に響き、床を震わせた。


 『汝の条件に同意した。』


 「ああ、ありがたい。しっかし、ここも音響がいいなぁ。良い芝居だったのも頷けるぜ。」


 『どんな音響のことを言ってるのだ、ジョー・マリガン?』


 ジョーはまばたきを一回すると、さも当然のように答えた。


 「さっきの特別イベントのことだよ。絶望的な独身男性が真実の愛を見つけられるようにって意味じゃないのか?」


 お前の頭脳が絶望的複雑怪奇だ、とマグラスラックは思ったが、言葉を呑み込むことにした。上位者にそう評価される人間は、ある意味では英傑なのかもしれない。


 『それは間違いだ、ジョー・マリガン。ここはカルト教団の儀式が行われた場所だ。ワタシをこの現実に召喚しようとして、我は彼らの声に答えたのだ。杜撰で手際が悪かったがね。』


 『汝が見たであろう兵士たちは、力ずくで我の到来を阻止しようとしたが失敗し、現在の状況に至ったという訳だ。』


 「あ、うん、色々と説明がついた。ローブを着ていたり、唱えていたりと、彼らを批判したくはなかったんだけど、マジでカルトだったのかな?」


 『よもや、汝、今、周囲の真実に気づいたとは言うまいな?」


 「あはは...。今思えば明らかだったわな。まあ、注目の的になるのが好きだったんで、裸もさほど苦ではなかったけどね。」


 神の如き威光を湛えた無数なる眼は、一斉にカッと見開かれると、ジョーの目前まで迫った。


 『一体、どうやってこの無知なる偉業を成し遂げたのだ?』


 対して、ジョーは胸を張るとーー


 「私が馬鹿だからだッ!!」、と宣言した。


 『.........?????』


 「カルトがくれたパンフレットに目を通しただけで、彼らの言うことを何でも鵜呑みにしただけだッ!!」、と彼は続けて言った。


 『そんなに簡単に、彼らにその矮小な命を任せたのか?』


 「言われてみれば、馬鹿げていたな。彼らのボスはかなり信頼できる男だと思ったし、少なくとも。彼が私に『彼女を作れる確実な方法がある』と言ってきたから、私はそれを試してみようと思ったんだ。」


 『ちょっとだけ?』とか、『お前の目は節穴か』とか、色々思う所があったマグラスラックだったが、これも呑み込むことにした。上位者の心は深海よりも深いのである。


 『.....汝の髪の毛に絡まった脳みその持ち主であった人間のことか?』


 「え、うわ、本物か?いや、このカルトが本物なら本物だな。最悪だ。.........まあ、音楽とかBGM無しで、よくあそこまでシンクロできるな、と感心できたからいいっか。良いパフォーマンスだったしね。」


 『それは同意できる。私を誘き出そうとする彼らの無意味な試みが最も面白かった。』


 無能さは完璧さと同じくらい啓発的である愉悦に満ちていることが多い。少なくとも、マグラスラックの意見がそうだった。


 「それで...」、と珍しく躊躇する素振をジョーが見せた。


 流石に真面目な話になるか、と上位者も(気持ち程度)居住まいを正した。




 「彼女はできないんだな?」


 『...。』




 僅かに生じた毛ほどの殺意を抑え、マグラスラックは気を取り直し、言った。


 『何とかなるかもしれないな、ジョー・マリガン。汝は誘拐犯に騙されていたかもしれないが、我の能力はでっち上げではない。』


 「本当に!?願いを叶えることができるのか!?」


 『その通り。汝の現実は我の玩具であり、我の思うように折り曲げることができる。汝の哀れな願望を叶えるのは、実に些細なことだ。だが、これには汝との契約が含まれる。』


 「素晴らしい!素晴らしい!でも、本当にいいのか?あなたは忙しそうだし、偉い人のようだし.........私も境界線を踏み越えたくないからね。」


 『何を今更』、と割りと本気で上位者は思った。想いは呑み込んだが。これは戦略的な思考停止とも言う。


 『安心してくれ、ジョー・マリガン。これは気まぐれではなく、義務だ。』


 マグラスラックを現実に連れてきた儀式はまだ終わっていないのだ。大いなる上位者は召喚者の要求に応えなければならなかった。存在全体を存在させるまでは、生け贄の祭壇からは動けないのだ。


 しかし、周辺に残っていたのは、会話対象の珍妙な人間だけだった。そのため、召喚士の責務はなし崩しにジョーに委ねられるということになる。


 「そうだ、それはそれで素晴らしいけど、名字を捨ててジョーと呼んでくれないか?」


 監視者たる存在は、この絶好の機会を逃さなかった。


 『!』



 その二つの言葉で、すでに歪んでいたマグラスラックの周囲の空間は完全に粉々に砕け散った。光を奪う煙のように、転がり、脈動する影が世界の亀裂から押し寄せ、部屋全体を包み込んだ。


 瞬く間にしてこの深淵なる恐怖を宇宙に解き放った愚かな大馬鹿野郎は、暗闇の海で泳ぐ瞳のタペストリーに、何時の間にか囲まれていることに気がついた。


 「ああ、くそっ。が私の願いだな?」


 『その通りだよ、ジョー。』


 マグラスラックは口頭でのコミュニケーションに同意していたが、それは要求というよりも提案だったため、カウントしなかったのである。


 「言葉通り、災いは口から、か。」、と男は肩を落とした。


 「簡単に得たモノは簡単に失われる、とはよく言ったものだ。とにかく、これを外してくれないかな?私の予約したドラマの配信が、もうすぐなんだよ。」


 『相変わらず何気ない口調でものを頼む。もしや、自分の置かれている状況が非常に危険なものであると気付いていないのか、人間?』


 「ああ、いや、わかってはいるさ。私は頭が良くないかもしれないが、私もそんなにバカじゃあない。私を解放するか、聞くに堪えないことが起こるかのどちらかだとは思っている。正直、。」


 『またしても汝の言葉に、欺瞞の味と論理性が欠けている。何故、監視者のマグラスラックである我を、恨まぬ?我のせいでここにいるのだぞ?』


 超次元的存在は、別に不幸な男に何か惨いことをしようと、企んでいるわけではなかった。己の姿を見るや否や、恐怖で逃げ惑う人間に慣れていただけである。


 だから、この人間の異常行動が謎だった。そして、マグラスラックが何よりも好むものがあるとすれば、それは謎だ。


 「う~ん、君のせいじゃないんだよね?」、とジョーは肩をすくめた。


 「それに、今の状況は私自身のせいだ。言っておくが、私は今、とぉっても厳しい言葉で自分を精神的にシバキまわしている。それに、次に何が起ころうと、もう私の手には負えないから、ストレスを感じていても仕方がない。是非もないよネ!」


 『....好奇心をそそられるな。本当に、好奇心をそそられる。ジョー、汝のような人に会ったことが、終ぞ無かった。興味をそそられるのだ。もしかしたら、互いのためになるような取り決めができるかもしれない。』


 「ほら、また心配になってきたよ。」、と彼はいささか神経質そうに微笑んだ。


 「私は決断するのが苦手なんだ。」


 『心配するな、ジョー。今から提案する条件は、汝の好みに合うと確信している。』


 「わかったよ。全力で耳を傾けてやるさ。」


 『汝は聴覚器官を自発的に傾けることが可能なのか?機能的に無理だと推定するが?』


 「あ、うん、無視してくれ、言葉のあやというヤツさ。全力で聞く、て意味だ。」


 『承知。』


 無数の目が一瞬だけ青白い光を放ち、マグラスラックはこの至極どうでもいい知識を広大な記憶に刻み込むと、目前の話題に戻った。


 『我は汝に自身を縛り付けることを誓おう。さすれば、我は汝の壊れやすい存在を守り、庇護することができる。見返りに、汝は我のとなり、この現実に留めるための楔としての役割を、果たしてもらう。そうすれば、私はこの現実と、それが提供できる総てのモノを詳細に研究することができよう。』


 「...相棒ダチになりたいってことか?」


 『汝が望むなら、相棒伴侶になろう。』


 「そうだね、うん、それでいいわ。見返りに必要なのは、色々と案内して教えてあげればいいだけ?」


 『要するにそういうことだ。』


 「本当に私が必要なのか?あなたは私よりずっと賢く見えるが。」


 『ほとんど全ての点においてそうだが、一つだけ違う。汝のこの現実の住人としての知識のみ、我の知識を凌駕している。』


 「...断る理由が見当たらないな。あ、私の宇宙を消滅させたりとかしないのか?」


 彼はこの宇宙に住んでいたし、(次元の果てまで)飛び散らない方がいいとは思っていた。


 『それこそが正に、我がこの契約を利用する理由であり、回避しようとしているシナリオだ。ジョー、我は確かにこの次元の内部の働きに深い関心を持っているが、過去の研究の試みは見当違いだった。人間の心も、我の調査に耐えられないほどに脆い。』


『この次元を破壊せずにこの次元の秘密を知りたいのであれば、適切に繊細な手段を使う他ない。故に、汝の意見を求めたい。』


 「なるほど!じゃあ、今すぐにって、あ。」


 ジョーはカリカリと頭を掻くと、申し訳なさそうに提案をした。


 「...私が言うのもアレなんだけど、誤解しないで欲しいが、君はちょっと......アレなんだ。見た目よりもずっと合理的で、とても好感が持てるが、それは私だけだ。道行く人が君を見たら、(オブラートに包むと)パニックになるかも、よ?」


 『汝の言葉には、そのシンプルさと相反する知恵がある。汝の懸念はもっともだが、結果的に重要ではない。我の存在を運ぶことができる肉の器を作るのは、些細なことだ。』


 『...汝が我の楔として働くことに、同意してくれれば、な。』


 「ん?何をどうするつもりなの?」


 宇宙的存在は、己の高次元的意図を伝えるために、より口当たりの良い表現を考えた。


 『私は自分を人間に変えられる。』


 実際にマグラスラックは変身をしたことがなかったが、変身自体は十分に己の能力の範疇内だった。唯一の懸念は、ソレがどのような形をしたとしても、『無害』でなければならないということであり、それが何を意味するのかがよくわからなかった。


 結局のところ、人の美学の感覚は上位者にとっては、オレンジ色を火曜日と比較するようなものであり、人間からは計り知れないほどに異質だったのである。


 ありがたいことに、ジョーの潜在意識の中から『適当な容姿』を摘み出すのは簡単なことで、彼を狂気に陥らせる危険性もほとんどなかった。それはマグラスラックが嘘発見器の如く使用していた感覚と同様の能力であり、男はそれにさらされた後でも、十分に機能しているように見えた。


 「それは確かに便利だ!」、と彼はうなずいた。


 「それができるなら、断る理由は一つもないよ。」


 断る理由は、実際には27も候補があった。ジョーのような馬鹿でさえ、もっとよく考えていれば、そのうちの少なくとも5つの理由に気づくはずだったが、彼は急いでいた。


 前述したように、彼のドラマがもうすぐ始まるので、それを見逃すわけにはいかなかったのだ。『逃避行の恋』の最新エピソードで、ヒロインが彼氏を刑務所から逃すためにある悪党との結婚に同意するかどうかが明らかになるのだが、ジョーはそれを見逃すわけにはいかなかったのだ。


 やはり馬鹿である。


 『では、我が提案した条件に同意すると?』


 マグラスラックは確認を求めた。


 「同意するよ。」


 『契約は結ばれた。』


 その言葉に空間が震え、ジョーはナニかが肉体を巡る感覚を覚えた。


 「え、待って、それだけ?」


 「私の血か何かで契約書にサインする必要とか、ないの?」


 『必要ない。同意で十分に拘束力が発揮される。』


 「それはちょっと残念かな。」


 『...汝の血で署名する契約書を用意しようか?』とマグラスラックは親切に提案した。


 「面倒でなければ。」


 空気の中から黒い羊皮紙が現れ、ジョーの顔の前に浮かんだ。監視者が提案した短くも壮大な条件が、奇妙な赤いインクで書かれていて、不吉な光を放っていた。


 「よっし!」と彼は大きくニヤリと笑った。


 「右手に持ってきてくれないか?この手錠が邪魔で手が届かない。そういえば、あいつらはどこで手錠を手に入れたんだ?SM系のカタログかな?」


 些細な儀式という回り道を経て、ジョーは契約書にサインをすることに成功した。


 「素晴らしい。」と彼はニヤニヤと笑った。


 「これで近所のガキたちに見せる記念品ができたよ。ありがとう。」


 『感謝は必要ない。さて、の儀式を始めよう。』


 闇と目のカーテンが引っ込み、儀式室のむき出しの金属の天井が再び現れた。上位者の実体のない影は天井の一点に収束すると、原油の巨大な塊のようにヌメリを帯びた。


 それは重力に屈すると、まだ拘束されている男の上に落ちると飛び散り、彼を完全な闇で包んだ。しばらくして視界が戻ってきたとき、ジョーは何か重くて温かいものを彼の腹部に感じた。ちらりとそれに目をやると、彼は予想もしなかった絶景を見た。


 彼のお腹の上に座っていたのは、彼がさっきまで考えていたドラマのヒロインと寸分変わらないように見える、人間の女だった。彼女の顔は驚くほど優美で、曲線的で均整のとれた体つきをしていた。


 しかし、そのしなやかで柔らかな肉の下に潜む、冷たいモノをジョーは感じた。


 彼女の長く真っ直ぐな鴉のような黒髪は、まるで生きているかのように、ゆらゆらと揺れていて、虹彩は暗い混沌の如く渦巻いており、言いようのない空虚さへの入り口のようだった。彼女の肌は非常に青白く、触ると少し奇妙な感じがした。悪くも不快でもなく、ただ...奇妙だった。


 彼女が自分と同じように裸であることを考えると、ジョーは急に己の感覚が鋭敏になったように感じられた。彼女の裸のお尻が彼のお腹に押し付けられているのを感じ、彼女の豊満な胸と薄いピンク色の乳首が露出しているのを見て、彼のある部分が思わず反応してしまった。


 ありがたいことに、少女のように見えたものは、彼女の背中に押し付けられている筋肉に気づかなかった。彼女がそれを気にしていなかったのか、それとも密かに腹を立てているのか。彼女の顔の表情は非常に読みづらいので、それを察するのは困難だった。


 彼女はまばたきのない視線をジョーに向けると、宇宙で最も小さな微笑みを浮かべた。


 「好奇心をそそる、この肉と呼ばれるもの。これも、存外に悪くはない。」


 彼女の声は非常に柔らかく、完全に女性の外見に合ったものだったが、ジョーはまだこの状況を受け入れようと、脳をフル稼働させていた。


 「あー、それはいいけど、でも、メリンダ・スパークスターに似ているのは何か理由があるの?」


 「汝の好みに合わせて選んだ。」


 「...。」


 ジョーは今になって薄々と、『相棒』の定義ですれ違ったのかもしれないことと、彼女が己の願望を聞き入れてくれたのかもしれないことに気付いたが、それを口に出す勇気は無かった。彼が約束を破ろうとしていると、解釈されてしまうような気がしていたためである。


 そんな危険を冒してまで、これ以上自分の悪運を追い込むつもりはなかった。彼でさえ、そこまで愚かではない。絶世の美女に付きまとわれて、文句を言うつもりもない。


 「この形は不愉快か、ジョー?」


 「いや、いいんだよ、むしろコレがいいわ。実に素敵だ。手足も...形もいい。」、と男はなけなしの矜持を振り絞り、必死に『おっぱい』という言葉を避けた。


 「嬉しい。」


 今は女性となった宇宙的存在は、初めての肉彫刻が成功したことに、内心かなり満足していた。


 「汝とのパートナーシップを楽しみにしている。」


 彼女はそう言うと、ミクロサイズの笑顔が少し広がった。


 「こちらこそ。マグラ、いや、マガハルさん?ごめん、名前は何だっけ?」


 「オブザーバーのマグラスラックだ。」


 「そうか、それはちょっと言いにくいね。『マギー』と呼んでもいい?」


 「がそう呼ぶことを許そう。」


 こうして、ジョーは夢の彼女を手に入れた。想像していた形とは違ったが、彼は幸福であった。


 「リア充万歳」、とジョーは小さく呟いた。









 彼は知らない。


 『名』が高次元的存在にとって、どれ程重大な意味を持つかということを。


 深淵とは、常に覗き返してくるものだ。




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