第21話 「古代エジプトのラーメン!? あなたはいったい、何を言ってるの!?」

「ふっふーん、グッドな態度アルネ? 頼まれた以上、助けないわけにはいかないアルヨ。困ってる人を助けるのが、正義の味方でアルからネ!」


 そういうとラー・メンマは、滑り台の上からクルクルッと回りながら、シュバっと華麗に飛び降りた!

 あの回転にはいったい何の意味があるんだろう?


 そしてそのまま真紅の炎をまとったラー・メンマは、強烈なファイヤー・ドロップキックをわたしが戦っている魔獣Bにお見舞いする!


 魔獣Bは、炎に包まれながら吹っ飛んでいった。


「あ、ありがとう、ラー・メンマ」


 アスカムーンへの嫌味な態度はさておき、助けてもらったことにわたしは感謝の意を表明する。


「構わないアルヨ。弱者を助けるのは正義の味方の義務アルネ。だけど、この程度の魔獣に苦戦するなんて、シャイニング・プリンセス・ステラには正直失望したアル」


「う……っ」


「まったく、こんなヘナチョコを相方にするなんて、アスカムーンも平和ボケしたアルカ?」


「うぅ……っ」


 わたしが逃れようのない事実をつきつけられて凹んでいると、


「ヴァッ!! ヴァッ!!」


 吹っ飛ばされた魔獣Bが、怒りの雄たけびを上げて立ちあがった。


「まだ動けるの!? ラー・メンマ、わたしが援護するから――」


「いらないアル」


「え――?」


「この程度、ワタシ一人で十分アル」


「でも――」


「黙って見ているよろし、本場中国の正義の味方の実力を、今からたっぷりと見せてあげるアルネ! はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ――!!」


 ラー・メンマが気合を入れるとともに、真っ赤な炎のようなM・E・Nめん超宇宙コスモスが高まっていく――!


「こ、これは――! なんてすごいM・E・Nめん超宇宙コスモスなの!?」


「フフフ、古代エジプトの偉大なる太陽神ラーメンに全てを捧げた巫女、それがラー・メンマ。太陽神の力を借り受け戦う、太陽の戦士アルネ――!」


「古代エジプトのラーメン!? あなたはいったい、何を言ってるの!?」


 意味がまったく解らないよ!


 だけど、混乱のかなたにあるわたしとは違って、アスカムーンは思うところがあるみたいだった。


「はっ、そう言えば聞いたことがあるわ! かつて古代エジプトでは最高位の神として太陽神ラーがいた。そしてラーはさらにアメン神と習合しラー・アメンとなって、それが中国に伝わりラーメンの語源になったという説があるのよ」


 アスカムーンは自身も魔獣Aと戦いながらも、漫画でよくいる説明キャラポジション的にそんな解説をしてくれた。


 でもあまりに内容がひど過ぎて、


「そんなバカな!?」

 思わず全否定して叫んじゃったわたしなんだけど、


「エジプト文明、中国文明、メソポタミア文明、インダス文明――古代四大文明は太古の昔から交易や、特殊な感応能力で繋がっていたと言われているわ。だからエジプトの最高神となったラー・アメンがラーメンになって、さらにそれが『偉大なる存在』として古代中国に伝わって現在のラーメンになったとしても、なんら不思議でないわ!」


「は、はぁ……へぇ……ふぅ……ほぉ……」


 ま、まぁ?


 麺にたいへん造詣ぞうけいの深いアスカムーンがそう言うんだから、そういう説もあるんだろう。


 そこまで言うんだもんね、うん。


 わたしは深く考えるのをやめた。


 そんな何とも言えないやりとりをしている間にも、ラー・メンマは燃え盛る紅蓮の炎の如きM・E・Nめん超宇宙コスモスを高めてゆく――!


「行くアルネ! 偉大なる太陽神ラーメンよ、我に力を――! ラー・エルム・ラー・カイラム・ラー・ディッシュ・ラー・メン! アチョーーーーー!!」


 太陽神ラーメンの激しい炎がラー・メンマをおおい、そこから猛烈なパンチの連打が解き放たれる!


 1秒間に100発の猛烈な連打は、言うなればそう、灼熱のラーメン百裂拳!


「アータタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタタ! お前はもう、死んだアル」


 ラー・メンマの怒涛の連打が止まった時。

 そこにはもう既に、何も残ってはいなかった。


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