足は飾り?(3)

 ファトラが挙げた通り、足は色んなことをしていますね。それなのに足そのもので自由に動かせるといえば指くらい。ほとんどを足首に依存しているのでしょう。案外難しい気がしてきました。


「自在に動く足首に全重量を負担させなくてはならないんですね。そこに集中して考えるべきですか?」

 ギナも当然理解しているものとして議論を誘導します。

「現実的ではないの。足首に負荷が集中すると損耗が激しすぎるの。稼働時間が限定されてしまうのでは意味ないの」

『機構的に無理があればメンテナンスに頼らざるを得なくなります。消耗部品が増え交換頻度が上がれば、実用性は遠ざかります』

「技術的にはそうなんでしょうね。でも、実際の足は指しか動かないと思うんですが?」

 素人から見れば人体にも無理があるように思えてきます。

『構造力学上、足首への負荷は少なくてすんでいます。それでも人体の中では故障しやすい部位であるのに変わりありません』

「それが22mのロボットになれば論ずるまでもないと。いっそのこと強度重視で進めてもいいんじゃないですか?」

『それは……』


 ギナは当惑の表情に変わってファトラでさえ言い淀みます。どうやら絶対に選択してはいけない方向性のようでした。ぼくには理解が及ばないんですけど。


「例えば子供向けのコンテンツに現れる巨大ロボットなどは『ガシャンガシャン』と騒がしい音を立てて歩くじゃないですか? 大きな獣だって『ドシンドシン』と表現されます。ある程度大きくなったら仕方がないんだと思ってたんですけど?」

 そこまで考えて描かれているとは思いませんけど。

『あれは臨場感を出す演出効果に過ぎません』

「よほど構造が単純でない限り、そんな音を立てて動く機械は三分と持たずにパーツが限界を迎えるの。そんな稼働時間では使いものにならないの」

『もう少し考えたほうがよいぞ、あるじよ』

 集中攻撃されています。

「専門家から見るとそんな感じなんですね。よーく分かりました」

『足から足首にかけては柔軟かつ強度を兼ねそなえた構造でなくてはなりません。それを前提にお考えください』

「なのなの。負荷を分散するしかないの」


 ギナたちの考えは足首から先の構造で全体の負担を柔軟に受け止めるもののようです。これはぼくには荷が重いと感じてきました。


「さて、どうしたものでしょう?」

「まずは実物から学ぶの。間近に観察すれば何か得られるかもしれないの」

 ギナが靴を脱ぎ始めました。

「なるほど。では」

「きゃはははー、なのっ!」


 彼女の小さな足に触れて中の骨を確認しようとまさぐると笑い出しました。屈みこんだ僕の頭をギナはポカポカと殴りつけます。


 非常に理不尽な扱いを受けています。

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