足は飾り?(1)

 ギナと一緒に3Dモデルを眺めていると人体っぽくなってきたと思えます。用途を限定するならこのままでも実用に耐えるんじゃないかって思うくらい。


『腰を覆うプロテクタは大型かつ重厚になっております』

 ファトラが今日までの変化を説明してくれます。

『レリ様のご提案くださった駆動機構はシリンダが露出する構造を有しており、外部からの衝撃に対応する必要が生じました』

「そのぶん重量がかさむんでしたら欠陥といってもいいのでは?」

「些細なことなの。ヒッププロテクタは予備燃料とかの格納場所としても便利なの」

 ギナが言うには、手の届きやすい場所は都合がいいのだそうです。

『姿勢制御用の噴射口等も設ける予定となっております』

「なるほど、色々と用途があるなら僕に異論はありません。ちょっと思ったんですけど、宇宙運用だけを考えるならこの形状でも十分なんじゃないですか?」

「できなくもないの」


 ぼくが思い付くようなことは彼女も分かっていたようです。完成と口にしない以上は何か理由があるのでしょう。正直、予想できてしまうのですけど。


「蹴れ……」

「はいはい、蹴れませんね。そういう趣旨での股関節構造でしたもんね」

「訊かないでほしいの」

 妨げられたギナはちょっと不満そうです。

「重力下での建設作業や宇宙開発での運用も視野に入れてるの。そういうのは足がないと不便な場面も多いの」

「宇宙開発?」

「別に厳環境下への生活圏の拡大までは考えていないの。可住惑星を探せばいいだけなの」

 観測可能範囲だけでもかなりの数の可住惑星が発見されています。

ウェア宇宙服無しでなければ生活なんて成りたたないの」

「不便極まりますもんね」


 現人類には超光速航行技術があります。目的地さえはっきりしていれば空間連結する方法もあるのです。無理に厳しい環境の惑星に移住する必要性はありません。


「でも、人の生活に資源は不可欠なの。母なる星ナルジみたいに、惑星を消耗させて発展していては未来に負の遺産を残してしまうことになるの」

「このロボットを極限環境下における資源開発にも運用可能だと思っているんですね?」

『戦闘に耐えうるということは、様々な場面にも対応できうると仮定できます。それらを踏まえて研究開発を行っております、レリ様』

 ファトラも汎用性を鑑みてギナの設計思想を反映させているみたいです。


 ぼくたち人類の大部分は未だ発生した惑星だけに留まっています。この星だけを生活の場としていた頃は当然資源採取を行っていました。そうして消耗させた惑星を復活させるのには相当の努力を要したのです。


「足は飾りじゃないの。殴るのには踏ん張りがきかないとダメなの!」

「そこに帰結してしまうんですね」


 思わず溜息が出てしまいました。

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