股関節は強靭さが必要?(4)
「はぁ……」
つい溜息が出てしまいます。
「レリもなにも思い付かないの?」
「いえ、残念ながらギナの発想のほうについていけていません」
「なにも変な事はないの。殴ったり蹴ったりは基本なの」
それは格闘技の話でしょう?
「別に巨大ロボットに格闘をさせなくてもいいんではないですか? ましてや宇宙空間での運用も視野に入れているんですから」
「余計に必要なの。遠距離エネルギー兵器は防御フィールドに力場シールドで防げるの。電磁波変調分子ヘスタロンもあるからレーダー照準も無効なの。ビーム兵器なんて隙を突かないと当たらないの」
「だからって格闘戦ですか」
理屈には適っていると思うんです。でも、僕の中のなにかが正当性を否定したがっているんですよね。それをギナに理解しろというのは難行です。打開策を練ってみましょう。
「ストレートシリンダなので横からの衝撃に弱い。そこが問題なんですよね?」
『新たな駆動機構はないものでしょうか?』
ファトラまでもが柔軟な発想を期待しているみたいです。
「うーん……。こう考えたらどうでしょう。軸方向の衝撃に耐えられるんでしたらストレートシリンダは垂直に配置すればすむんじゃないかと」
『主、我が3Dモデル化しよう。イメージを送れ』
「こんな感じです」
現状、内側に配置されている駆動板を太腿の外側に移動します。シリンダは軸受けではなく、基底フレームそのものへと垂直に接続。これならば開脚駆動も可能でしょう。
「これはダメなの」
『はい、要素が足りませんね』
ギナと
「股関節には爪先を外側に開く駆動も必要なの。これでは歩行時の方向転換が不可能なの」
「ですね。でも、それって股関節で絶対にやらなきゃいけないんですか? 膝関節で下脚部だけを旋回させてもいいんじゃないですか?」
「にゃっ!」
『なんと……』
皆が絶句します。そんなに常識外れなことを言ったのでしょうか。
『発想の転換です。人体が股関節で動かす要素は絶対に満たさなければならないと思いこんでおりました』
「……ファトラ、耐荷重計算をするの」
『しばらく……、はい、十分に耐衝撃性を備えています。それどころかシリンダがダンパー効果も生み出しております』
ギナがゆっくりと僕へと振り向きます。
「天才なの」
「いや、天才に天才と言われてもですね」
「軸受けは球体から水平軸に変更なの。逆に膝関節を球体軸受けに変更で決定なの。ストロークをシミュレートしてシリンダ径を算出するの」
彼女は試案を実現へと導くのに夢中になってしまいました。
放置されたぼくはお菓子に手を伸ばして味わうことにします。
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