胴体はレイアウトが大事?(1)

 新刊は校了し、あとは出版を待つだけになりました。作者の僕にできることといえば自著の宣伝くらいになります。

 メディアへの露出はあまり好きではないので宣伝もままなりませんが、インタビューを受ければおざなりに付け添えます。頑張ってくださっている出版社の方々のためにできるのはそれくらいですので。


「お疲れさまなの」

 ギナもぼくの話から出版の流れはおおよそ理解しているようです。

「宣伝してあげたいけど、ギナも人がいっぱいのところは嫌いなの」

「構いませんよ。君が嫌な思いまでしなくてもそれなりには売れてくれます。名前が独り歩きしている感は否めませんけどね」

「レリが人気者になって忙しくなるのも嫌なの。ごめんなさいなの」

 素直な彼女を微笑ましく感じます。


 正直、ギナが宣伝すればとんでもなく売れるとは思います。それくらいに彼女は工業界に大きな影響力を有していますから。求めたりはしませんけど。

 放っておいても、新刊の冠にきちんと政府機関オブザーバーの肩書が付け添えられます。それで十分に人の目は引くのですから問題ありません。


「うーん、まだまだ人の形には程遠いですねえ」

 設計作業卓の中央に浮かぶ3Dモデルには頭と肩から指先までしか完成していない仮骨組みが表示されています。

「今日のうちに胴体の基礎設計まで進めばそれっぽい形にはなってくるの」

「胴体ですか」

「なのなの」

 ひと際役に立たない部分に苦笑が隠せません。

「人体でいうと内臓が占める部分ですね。今までとは勝手が違います」

「違うの?」

「だってロボットに必要な臓器などほとんどないではありませんか。人体が胴体の全てと言っていいスペースを使って生存と活動に必要なエネルギーを生み出しているのに対して、ロボットは小型の対消滅炉を搭載するだけで賄えるはずです」


 人体が胴体に備えている消化器系、循環器系はロボットに置き換えればかなり小型化できるでしょう。ましてや免疫系など不要の臓器になります。


「確かに発生器ジェネレイタがあれば事足りるの」

 ギナもそれは承知のうえ。

「その分、他の大事な機材をレイアウトしないといけないの」

「他の機材ですか。例えば?」

「一番大事なのは操縦席コクピットなの」

 言われてみればそうです。

「それは確かに大事ですね。このロボットはギナが乗って動かすために造っているのですから本題といっても過言ではないでしょう。でも、コクピットは頭部に配置しているのかと思っていました」

「そんな危ないところには乗れないの」


 意外なことを言われてしまいました。

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