第6話 リンくんの治療

『もしもし、むくろですが』

「ああっ、骸先生! 起きていたんですね! 実は……」

 電話の先、「むくろ 京介きょうすけ」先生に話をする。今回のような場合には骸先生に頼るしかない。

『なるほど、保護したが大怪我していると。分かりました、行きましょう』

「ありがとうございます!」

 良かった〜、骸先生来てくれるよ。後は待つだけだ。


――


「ふーむ、これは深い傷だ」

 骸先生に上がってもらい、傷を診てもらう。やっぱり深いか。

「よくこれの洗浄と消毒に耐えたものだ。どれ……」

 骸先生が注射器を手に取り、薬品を充填する。リンくんは怯えているが体力の損耗が激しいのか動かない。

「麻酔ですよ。痛くなくなるものです」

 骸先生は優しく声をかける。格好はいいけどちょっと不気味な先生だが優しい人であるのは間違いない。

「縫います。三針くらいですね」

 淀みない手付きで傷を縫っていく。あっと言う間に終わってしまった。

「ふう、これで処置は終わりです。後はあまり激しく動かしたり濡らしたりしないように」

「骸先生、夜分にありがとうございます」

「構いません。どうせ私にしかできないことですから」

「あの、これ診察代です」

 茶封筒を渡す。大きな出費だけどリンくんの安心には変えられないのだ。

「……ちょっと多いですよ。三万円、まけておきます」

「すみません」

 骸先生はモグリの医者、表の顔は高校の生物教師だ。だから診察代も高いのである。

「では、これにて。しっかり休ませるようにして下さい」

 それだけ残して骸先生は帰っていった。さあ、今日はもう寝よう。明日もお仕事だし。

「レンくん、寝よっか」

「うん! リンくんも一緒?」

「そうなるかなー」

「わぁい、三人で仲良く寝るんだね〜」

 本当にレンくんはいい子だ。ヤキモチもやかず素直に新しい友達が出来たことを喜んでる。レンくんとリンくん、早く仲良くなってくれるといいなぁ。

「じゃ、電気消すよー」

 レンくんを右に、リンくんを左に抱いて私は眠りに落ちた。


――


「おはよう、レンくん、リンくん」

「んぅ」

「すぅ」

 あはは、二人とも完全に夢の中だ。二人分のお弁当と私のお弁当を作って今日は出よう。リンくん、お弁当気に入ってくれるかな? あ、そうだ、写真をパシャッとな。

 そして朝の用意をしていると時間なんてあっと言う間に過ぎてゆく。さぁ、出勤だ。


――


「南ちゃん、見て見て〜!」

「まーたレンくんの写真……あれ、一人増えてる?」

「そーなんだよー!」

 昼休み、またしても南ちゃんに写真を見せる。朝に撮ったベストショットだ。レンくんとリンくんが向かい合ってちょっと手を繋いでる写真!

「可愛い子を拾いましたね」

「でしょ! ああ〜早く帰って二人と遊びたいよ〜」

 早く! 仕事を! 終わらせる! もうそれしか頭にない。レンくんリンくん、寂しい思いしてないかな? 二人だから遊んでるかな? ああ、もう何にしても早く帰りたい。

「最近立川さん頑張ってますから今日も定時で帰れるんじゃないですか?」

「もう今日は定時で帰る! 何があっても定時で帰る!」

「あ、あはは」

 うおおおお、仕事を爆速で終わらせるんだぁー!


――


「よし、終わった! 帰る! 私は帰る!」

「お疲れ様です。例のごとく私は残業しますので」

「南ちゃんもお疲れ様! それじゃ!」

 レンくんリンくん待っててね、ご主人様すぐに帰るから!

 あ、そうだ! 帰りに焼き肉用のお肉を買っていこう。リンくんの歓迎会をしなきゃね。後は……ガーゼとかもついでに買っておこう。

 電車に乗って近所のスーパーと薬局に寄るのだ!


――


「ただいまー!」

「ご主人様、おかえりなさい!」

「むぅ、遅いぞ千尋よ」

 帰宅と同時に二人がお出迎え。二人ともゆるゆるシャツスタイルだね。さては着替えてないな?

「二人とも着替えずに何してたの?」

「えーっとね、リンくんとレースゲームしてたんだ」

「なかなか楽しかったぞ!」

「そっかそっか。まぁとりあえずお夕飯にしよう。今日は焼き肉だよ〜」

「わぁい!」

「肉か? 肉は好きだぞ!」

 二人ともノリノリだ。さぁパパッと用意して始めよう! 着替えてエプロンつけてホットプレート出して、野菜を切ってお肉を盛り付けて……よし、準備完了〜。後はお肉を焼いて〜っと。

「リンくん、お箸使える?」

「むぅ……よくわからないぞ」

「最初はそうだよね。ボクも使えなかったし」

「とりあえずフォークで食べよっか」

「そうするぞ!」

 またお箸の使い方も教えなきゃね。焼き上がったお肉をレンくんとリンくんに取り分けて食べ始める。うーん、二人とも幸せそうな顔だ。これが見たくてやってるところあるよね! この表情をアテにしてお酒もいけちゃうけどお風呂があるから我慢我慢。


 楽しいお夕飯にしよう!



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化猫 物書未満 @age890

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