第5話 わたしの悪夢の始まり
始めに。
──解離性同一性障害とは。
解離性障害は本人にとって堪えられない状況を、離人症のようにそれは自分のことではないと感じたり、あるいは解離性健忘などのようにその時期の感情や記憶を切り離して、それを思い出せなくすることで心のダメージを回避しようとすることから引き起こされる障害であるが、解離性同一性障害は、その中でもっとも重く、切り離した感情や記憶が成長して、別の人格となって表に現れるものである。(ウィキペディア引用)
神奈川へ戻ってきて少しの間は、ひさしぶりに平和な日々が戻ってきました。本当に、ほんの少しの間。
ちなみにわたしは前に通ってた小学校の地区ではなく、その隣の小学校の地区へと引越し、無事に転校しました。転校してからはしっかり通ってました。
“その時は”
神奈川に戻ってくると、引越した先のハイツでは母の彼氏があしげなく通うようになりました。
その頃から母が当初から患っていた、最近ではよく耳にすると思います精神疾患の代表といえる鬱病と、解離性同一性障害という少し特殊な精神疾患が酷くなり始めたのです。
解離性同一性障害は、祖母曰く、母が幼い頃よりあった気がするとの事。しかし最初に記しました通り、記憶を切り離してしまう病故に母自身にそんな記憶はおろか、自覚はまるでありません。
解離性同一性障害。
これは『わたしの母の場合』の症状だと思って、ここから先はお読みになってください。
解離性同一性障害を患ってる方が全員、わたしの母と同じ症状では無いのです。わたしの経験上の持論ですが、後天性の精神疾患はそれこそ十人十色だと断言します。(先天性は経験がありませんので、何も言う権利はありません。なので、先天性の精神系疾患の方を侮辱したい訳ではありません。ご了承ください。)
なぜここまで言い切るか、これもいずれ語れたらと思います。
わたしはある日、母だけど母じゃない誰かと会いました。そしてとんでもない爆弾発言をされてしまいました。
「お前の母親は死後、次代の神となられる空間の持ち主。大天使様だ」
皆さん、呆気に取られてませんか?
これは現実に言われた言葉です。といっても多少補正してます。確か、これに近い事を言われました。
死後? 神? 空間? 大天使? はい?
「そしてお前は死後、この大天使様の娘という特別な立場故に、天使になることができなければキューピットとなる運命にある」
・・・・・・Why?
もう二次元の話ですよね。耳を疑います。今現在なら。
しかし、この話を聞かされたのはわたしが小学三年生に上がり立ての時の話です。
幾つでしょうか。わたしは八月生まれなので、満九歳となる年齢一桁の子供に放たれた言葉でした。
わたしはといえば、小さい頃はアニメを見ながら絵を描くことが好きな大人しい子。
実をいえば、我が家にはわたしが誕生する前よりスーパーファミコンがあり、わたしが生まれてアニメのポケッ〇モンスターが好きになったが為にNINTENDO64(任天堂64。略してロクヨン)が保育園に入園して間もなく、誕生日プレゼントかクリスマスかでやってきました。カセットと一緒に。
なので既に根っからのゲームアニメオタクであり、小学二年生の段階で漫画の存在を知ったわたしは漫画を読み耽り、二次元の世界にどっぷり全身が浸かった小学生にして既に中二病脳になっていたんです。
そんな子供にこんな話を聞かされたら、どうなると思いますか?
わたしの目は輝きました。
心はルンルンなんて可愛い表現どころか、サンバを踊ってる気分でズンドコ(?)と高鳴りました。
本当に二次元みたいな世界は存在したんだ!!!! しかもママが次期神様!!!! わたしはその娘なんだ!!!! 天使とキューピットって何が違うんだろう!!? と。
馬鹿だと笑ってください。
そんなわけあるか。目を覚ませ、と。
それからというもの、母の他人格は度々顔を見せるようになりました。もちろんわたしの前だけでなく、祖母や叔母の前でも。
けれど祖母と叔母は「付き合いきれない」と早々に見切りをつけました。
本来はこれが普通の反応です。
なのにわたしは、母と、母の他人格にとてつもなく惹かれていったのでした。
同時進行で、神奈川へ戻ってきてから移り住んだハイツは二重ロック且つチェーン錠のある玄関で、前に比べたらセキュリティ面はかなりのランクアップをしました。なのでわたしはお留守番を許され、鍵っ子にステップアップ。
鍵の所持しているので下校後に帰宅すれば、今までならインターホンを鳴らす必要がありましたがそれもなくなり、鍵で勝手に家に入れるように。
始めこそそれが嬉しくて学校に通い、「これから学童なんだ」というクラスメイトに「ふうちゃんは鍵っ子だから!(ドヤ顔)」と言って、家の鍵を開けたいが為に帰宅していたものです。
それなのに。
家に帰ると「おかえり」とわたしを迎えてくれた母が、自分で自分の腕を切り刻んで血だらけにし、不気味に笑っている日に直面したのでした。
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