受講者からのリクエスト映画紹介!〜『イット・フォローズ』〜
第十一回目は新年初の講座? 外の世界がどうかは知らないが、この合宿所にいる間は永遠に夏の強化合宿だぞ。
今回はまたリクエストのあったホラー映画を紹介しよう。
こうしてたくさんの映画を観てきたが、ホラーでは大抵若者が主人公になることが多いな。
他にも、親世代の男女が主人公になり、怪異から我が子を守るために奮闘するものも少なくないが、休暇で訪れた場所で若者が被害に遭うのは定番だ。
若さは危険に近づく未熟さとも近く、生命力の高い者ほど命の危険に見舞われる瞬間が映える。光が強ければ闇も濃いということだろうか。
以前も言ったが、ジュブナイル映画を撮るのが上手い監督は往々にして質のいいホラー映画を撮ることがあるぞ。
今回紹介するのもまさに若者の悩みをそのまま映したホラー映画だ。
〜イット・フォローズ〜
監督は将来有望な映画監督に選ばれたデヴィッド・ロバート・ミッチェル。
彼はホラー要素が一切ない、十代の若者たちのお泊まり会を舞台にしたアメリカン・スリープオーバーという映画で長編デビューしており、まさにジュブナイルものが得意な監督だ。
2014年の作品だが、舞台はそれとなく80年代のアメリカではないかと推測されている。若者文化に着目した数々の映画が撮られた時代だな。
最近の作品でもわざと80年代風に撮った青春映画も少なくないぞ。
この映画の主人公は将来の不安を抱えつつ、日々を過ごしている少女だ。
彼女は親しくなった男性とデートの後一夜を共にするが、直後クロロホルムを嗅がされ、誘拐されてしまう。男性は目覚めた彼女にある呪いを移したといい、逃亡する。
その日から少女は様々なものに姿を変える“それ”につきまとわれ、命を狙われることになる。
友人たちの力を借りながら調べた結果、“それ”の呪いは性交渉によって移すことができるが、移した相手が死ねばまた自分のところに戻ってくるというものだった。
と、言うのが概要だな。
大人の世界に足を踏み入れたばかりの思春期の子どもたちの揺らぎが、そのまま恐怖として表現されているホラーというところだろうか。
作中では詩や小説などの引用も挟まれる。
女性をデートに誘いたいが自分の容貌に自信がない中年を描いたT・S・エリオットの詩。
破滅的な女性に尽くす純粋な男を描いたドストエフスキーの白痴。
どれも性愛や大人の人間関係への不安を表現したものが多いな。
“それ”の正体は明かされないが、病人や死んだ親など成長の先にかならずある死を予感させるものの形を取ることが多いのも特徴だ。
性交渉で移るというところで、性病やエイズを連想した受講者も少なくないだろうが、それは監督が否定している。
結末まで観て“それ”をどう捉えるか、そういう楽しみ方も大切だ。
俺個人の考えとしては、大人になり他者と関係を持つ上で生じる責任だと思ったけどな。
これが面白ければ、同じ監督のアンダー・ザ・シルバー・レイクも気に入るはずだ。
悪夢版ラ・ラ・ランドとも称されるミステリで、ハリウッド近郊に住むヲタクの少年が、恋した売り出し中の芸能人の少女が失踪した真相を探るうちに街の暗部に触れていく作品で、イット・フォローズのテーマとも近いものがあるぞ。
より楽しい夏が、終わらない夏にならないよう、しっかり理解を深めてくれ。
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