第5話 失いたくない彼女

 海の魔人は僕たちを襲う。

 僕は空の魔人との戦闘の際に使用した、セシルさんを見て能力をコピーする。


「借りるぞ。その力。貫けグリム・ランス


 海のすぐ近くにある森に目線を移し、そこにある木を操り、先端をねじらせ尖らせ、その木で海の魔人の腹を貫く。

 だが、次から次へと海の魔人が迫ってきて、体を休める暇がない。

 目を背けた瞬間が、命取りとなってしまう。


 さすがに疲れてきた。

 既に十以上の魔人は倒しているが、眼球は悲鳴を上げている。


「将軍。ここは一時撤退をした方が……」


 あれ!?


 僕は違和感に気づいた。

 先ほどまで周りには将軍たちや仲間がいたはずなのに、いつの間にか誰一人としていなくなっていた。


「僕は、幻覚でも見ていたと言うのか?」


 ようやく気づいた彼を、気球船に乗っている彼らは眺めて面白がる。


「ケッケッケッ。あいつ、今さら気づいたみたいだよ」


「バカだ。バカがいるよ」


「ケッケッケッ。速く殺しにいこうよ」


「まあまあ。ここには本当に海の魔人がいるんだ。彼らにボコボコにされるを、特と楽しもうではないか」


「ケッケッケッ。相変わらず怖いな」


 僕はいつから幻覚を見ていたのだろうか?

 いつの間にか、海の魔人と戦っていたのは僕一人。


 ふざけるな。僕一人で、この数の化け物どもを倒せるはずがない。

 僕は背を向けて森の中へと走った。森の中には魔人はいなく、小屋がぽつんと存在していた。


「ケッケッケッ」


 小屋の中に入ろうとすると、小屋はもやのように消え去った。

 僕は小屋のドアに寄りかかろうと体を前に倒していたので、そのまま勢いよく前に倒れた。土を削りながら手で顔が地面に触れるのを防ぎ、前回りをして頭を地面に打たずに立ち上がった。


「あの小僧。なかなか良い動きをするな。ケッケッ」


「気をつけろ。あいつは我々〈大災害〉が探している重要人物の一人なのかも知れないからな」


「ケッケッケッ。どうせここで死ぬよ」


「まあ、ここで死ぬ程度の雑魚ならば、〈大災害〉には相応しくない。さあ、試練を始めよう」


 僕は立ち上がると、どこかから激しい轟音が聞こえる。

 僕は轟音が聞こえる方へ走ると、そこでは、木が粉々に弾け飛び、土の破片が宙へと飛散し、赤い液体が空を舞っている。


 その被害の原因である者たちを見ると、見知った一人の女性と、謎の二人の女性が戦闘を繰り広げていた。


「お姉ちゃん。後方から強風が来るよ」


「おいもちゃん。エサの目線をよく見ておけ」


「ケッケッケッ。分かってるよ」


 二人の女性は息のあったコンビネーションで一人の女性を着実に追い詰めていた。

 二人の女性の内、背の高い方は見知った女性の目を凝視する。すると、その女性は目を抑え、急に苦しみだした。


「これで視界は封じた。お妹ちゃん。八つ裂きにしろ」


 手を刀にした女性は、僕の見知った女性へ走ってその女性を殺そうとしている。

 見知った女性の桃色の髪が揺れると、その女性の顔が僕にハッキリと見えるようになった。


 その顔が見えた瞬間、僕は走り出していた。


「早乙女ええええええええ」

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