第39話 写真

私が小学生の頃の話

一枚の写真が、私の元に回ってきた。

正確には、机の中に入れられていたのである。

その写真は、私と歳の変わらない6人の男の子達の写真だった。

皆カメラに向かって、笑顔でピースをしている。

真ん中の子の肩に、少し透けている手が写っていた。

心霊写真だ。


写真の裏に文が添えられていた。


この写真を捨てると不幸がおきる。

持っていても不幸になる。

人知れず他人渡す事。

自分以外の人に見せてはいけない。


不幸の手紙の話は聞いた事があったが、写真を回すなんて初めてだ。


私は、周囲を見渡して、誰にも見られてない事に気をつかい鞄に写真をしまった。

小学生の私は、その日一日が気が気でなかった。


放課後、隙を見つけて同級生の机に入れるつもりだったのだが、誰かしらが教室にいる。

私自身を何処からか見てる気がしてしかたない。

仕方なく写真を持って帰宅する事にした。


家に帰るなり自室に鍵をかけて、再び写真を見た。

写真に写る手が動いてるように感じた。

肩に乗せるように見えていた手が、首もとに移動してるようだった。


「誰に渡そう。」

「いつ・どうやって?」

終日考えていた。


晩御飯を食べて宿題をすべく自室へ戻った。

鞄を開けて教科書を出すとき、ヒラリと写真が足元に落ちた。

気持ち的にあまり見たくなかったのだが、目に入ってきてしまった。


子供の首に伸びた手はなくなっていた。

その代わり子供が7人になっている。

一人増えていた。

写真に不自然な感じなく増えているのだった。


夜中に、写真の中の子が襲ってくるのではないかと怖くなった。

この部屋に、いや写真のそばにいるのが危ないと感じた。

母にも相談できず、そわそわする自分がいた。


夜一人で寝る事ができずに、親の部屋にいった。

それでもなかなか寝つけなかった。


写真の中から子供がでてきて、私の首を絞める夢をみた。

あまりの怖さに飛び起きた。

まだ辺りは暗かった。

このまま起きて朝一番で登校するつもりだ。


その日は、7時45分位に家を出た。

いつもより15分程早い。

学年で一番嫌われている奴の靴箱に写真をいれに向かった。

誰もいないことを確認し、写真を靴箱へ。

またもや写真の子供たちが目に飛び込んできた。

一人だけ血だらけになった子供の顔が、こちらを見ていた。


私は、靴箱に躊躇なく写真を入れた。

何事もなかったごとく教室へ。

靴箱へ写真を入れる時は少しドキドキしていたが、今は落ち着いて自分の席についている。

少しの後ろめたさはあるが、日頃の仕返しをした感が強かった。


写真を渡さした彼は、その日早退をしていったのだった。


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心霊ノート 短編 徳兵衛 @bu-syuka

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