Chapter Four. The Answer -一つの答えがやってくる-
第18話 かつての相棒 ロッソ
あれから、1ヵ月ほど経っただろうか。ブライアンとの関係は以前のように戻り、また一緒に仕事をこなしていた。
今日、俺はブライアンと一緒に彼の元相棒の所へ向かうことになっていた。彼の元相棒のロッソは今では、一部の地区を任されている組織の幹部だ。
彼に失礼が無いようにと、「きちんとした格好にしろ」とブライアンに言われたので、滅多に着ない紺のジャケットとスラックスをクローゼットから取り出す。
そして、ブライアンが迎えに来るまでに着替え終えたが、ネクタイもしようと思って、適当に箪笥から漁った。だが、ネクタイをスタンドミラーの前で結ぼうとするがなかなかこれがうまくいかない。ようやく及第点の出来で結べたが、10分以上の時間を消費してしまった。
そんなことをしていると、インターホンのベルが鳴り、ブライアンが車で迎えに来た。ドアを開けると、ブライアンもスーツにネクタイという格好で、コートも普段よりおしゃれなクリーム色のものだった。ブライアンは俺の格好を見るなり、
「ネクタイがおかしいぞ」
と言って、俺のネクタイを結びなおし始めた。
「これでいい」
と言って、俺のネクタイを結び終えると、アパートの階段を下り始める。この歳でネクタイを結びなおしてもらったせいか、恥ずかしくて顔が少し熱くなるのを感じながら、ブライアンに続いて階段を下りる。
・・・
彼は街の郊外まで車を走らせた。彼の家も郊外なので、わざわざ俺を街の中心まで迎えに来たことになる。だが、周りの風景を見るにどうやら、郊外でもブライアンの住んでいるような中流階級向けの住宅街ではなく、高級住宅街に向かっているようだった。彼はある海沿いの住宅の前で車を停めた。その家は二階建で他の家より一際おおきな庭が目を引いた。門の前に行きインターホンを押す。
「どちら様で?」
「ブライアンだ。門を開けてくれ」
すると、インターホンから「わかった」という返事とともに、門が左右に開かれる。ブライアンは車に戻ると、門の中に車を進めた。庭の横の舗装された道を進み、玄関の前に車を停める。
すると、玄関の扉から一人の男が出迎えに来た。
「久しぶりだなあ! ブライアン」
「ああ、久しぶりだ。ロッソ」
と互いに挨拶をかわし、ハグをする。ブライアンは今までに見せたことのないような喜びの表情をしていた。そして、ブライアンは俺の方に手を向け、
「こいつが今のパートナーのベンだ」
「おう、君がベンか! 話には聞いてるよ」
と言って、ロッソは手を差し出してきた。
「はい、ベン・タイラーです。今日は招待していただきありがとうございます」
と握手に応じる。
「ブライアンのパートナーは大変だろう。俺も苦労したもんさ!」
とロッソは言った。ブライアンはそれを聞いて「何言ってやがる!」と言う感じに笑っていた。
「まあ、玄関の前で立話はなんだ! さあ、入ってくれ」
と家の中に俺とブライアンを誘った。
そうして、家のダイニングまで案内されると、テーブルの上にはピッツァやパスタなどたくさんのイタリア料理が並んでいた。
それを見て、驚いていると
「これは全部俺が作ったんだ!」
とロッソが自慢げに言った。それに対して
「腕を上げたようだな」
とブライアンは言った。
「それに今日はいいワインも手に入ったんだ! さあさあ座ってくれ!」
と座るように促してくる。俺は一番扉に近い位置の椅子に座ると、ブライアンもその横に座った。そして、ロッソは「料理を運ばないといけないから」と向かい側のキッチンの扉の近くの椅子を引いた。
彼はワインをそれぞれのグラスに注ぐと、椅子に座って音頭をとった。
「久しぶりの友人との再会と、彼の新しいパートナーとの出会いを祝して……乾杯!」
・・・
3人での食事はとても楽しいものだった。ロッソはブライアンとの思い出話をたくさん聞かせてくれた。そして、ブライアンもそれを聞きながら時折笑顔を見せるのだ。ブライアンがこんなに笑うとは今日まで想像もしなかった。
「だから、俺とこいつは7年も付き合ったんだぜ! 7年も! あと少しで結婚するところだった!」
とロッソは冗談めかして言う。ブライアンもそれに対して、
「おいおい、勘弁しろよ!」
とワインを口に付けながら言う。すると、ロッソは
「お前はよくやっているよ。一年でも持てば、ブライアンのパートナーとして俺に次いで2番目の長さってことになる」
と言った。
「こいつは、見た通り気難しいんだ。だから、若いやつに受けたもんじゃない」
俺はこれにはどう返答したもんか、と適当にごまかし笑いをした。すると、ロッソは時計を見て、
「もうこんな時間か。それじゃあ、デザートとコーヒーを用意しよう」
と言って、キッチンに向かった。そこで、ブライアンの方を見て、
「面白い人ですね」
と言った。だが、ブライアンの顔からすでに笑顔はなくなっていた。そして、
「ああ」
と悲しげに返答するのだった。
・・・
しばらくすると、ロッソはデザートとコーヒーを持ってきた。デザートは自家製のパンナコッタで、これがまた店で販売できるのではないかと思うくらいおいしいのだ。あまりにもおいしいので、会話も忘れてぺろりと食べてしまった。
食べ終わると、二人を交互に観察しながら何か話題の糸口を探ろうとしたが、二人ともさっきまでと違って一言も口を開いていなかった。
この変な場の空気に違和感を感じつつも「デザートおいしかったです」と言おうとした時だった。ブライアンが急に話し始める。
「ロッソ、何で裏切った?」
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