第30話

頭は痛いが聞かない事には何があったのか解らないし、先に原因を作ったのがどちらかも解らない。

近くにいた居酒屋の店員に話を聞いてみる。


「今来た所で何も知らないのだが、この状況はなんだろうか?」


「ああ、実はだな…」


何人かの店員から得た情報によっておおよその状況は理解した。

なかなかややこしい事になっているらしい。

糸が絡まりに絡まってしまって戻らない感じだ。

とりあえずはあの場に割り込まなければいけない。


「お取り込み中の所、失礼する。


貴方達は自分が一体何をしているのか解っているのかね?」


「僕は彼女達を守っただけだ!」

「何だと!?俺のダチを何も聞かずに殴りやがって!」


「それぞれの事情はあるかもしれないが、君達は今もこの店の営業妨害をしている。


店主が望めばそれなりの対応を取る事も出来るだろう、それ位は解るか?」


「それは…」

「ぐ…」


「どちらが事の発端かは話を聞けば済む事。


自分に非が無いと言うのなら、どちらもまずは落ち着いた方が良いと思うが?」


とりあえずどちらも黙ったな。

争いが鎮まったからか段々と人混みが掃けていく。

野次馬根性というのはどの世界の人間にもあるようだ。

そして争いの中心にいた男達のグループと少年とその連れ合いであろう二人の女性は私の方に目線を向ける。


「まずは話をする前に倒れている人の処置をしなければな。


どんな怪我だろうと放置していいもの等一つもない」


周りに居る人に協力して貰い、倒れている人達の手当てを行う。

この世界には回復魔法等という都合の良い魔法は存在しないのだ。

薬草を使った傷薬や飲み薬は存在するが、魔法に怪我を癒す様なものはない。

それに関しては前世と同じと言えるな。

怪我の処置が終わり、この騒ぎの原因となった二組に向き直る。


「さあ、話を聞かせて貰おうか」

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