第27話

素振りをしていると次第に余計な思考は削ぎ落とされていく。

今はただ目の前の斬るべき敵に向かって剣を振り下ろす。

敵は一振り前の自分自身、敵はいつでも己の中に存在する。


もうこれでいいではないか、もう充分だ。

お前は強過ぎる力をもう持っている、誰にも負けはしないじゃないか。

そんな甘い誘惑、傲慢さを叩き斬る様に素振りを続ける。


強さに充分という言葉はない。

おごらず、一歩一歩と前に進み続けてこそ見える強さがある。

成長に限界など存在しない。

もし限界があるとするならば自分が折れた瞬間、妥協した瞬間だ。


だから私は修練を続ける。

仕事の為に力をつけるという名目もあるだろうが、人間として成長し続けていく為にやっている事。

だから修練に終わり等あるはずもない。

人生そのものが修練であり、また戦場なのだから。


周りで同じ様に素振りをする者や魔法を練習する者が増え始めたが、私には教えてやれる事は何もない。

私がやってきた修練は私だけに通じるものであり、他の者に通じるかは解らない。


そんな中途半端な事を教えては成長の機会や間違った方向に導く事に繋がるかもしれない。


「つくづく私は師には向かないようだ」


そもそも私自身がまだまだ修行中の身、何を教える事が出来ようか。

ただ私の素振りや魔法が刺激となるかもしれないのならば続けよう。


終わりは彼が目覚めるまで、何百何千でも続けようではないか。

その程度ではもう汗を流す事も無くなったが、良い運動にはなる。


それにしても彼との勝負は色んな収穫があった。

また誰かと試合をしたいものだ。

今度は剣や物理攻撃ではなく魔法での勝負が良いかもしれない。


魔法は私の前世には無かったモノだ。

この世界の強者が使う魔法を見てみたい。

どんな使い方をするのだろうか?

魔力量はどんなものなのか?

そして、私が創り上げた無属性魔法は通用するのか試してみたい。

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