第19話

拠点に戻り、必要な物が無いか確認するも今は木剣だけで十分だな。

荷物が多すぎても身動きが取りづらいし、本に書いてある内容の殆どは覚えてある。


後で必要になったら取りに来る感じでいいだろう。

この日の為に街道へ出る道は確認済みだ。

迷う事なく、街道方面へと歩を進めていく。


街道に着いたのはいいが、どちらに進もうか?

街道はそれなりに人通りがあるのか、色んな跡がある。

とりあえずは足跡などの痕跡が多い方に行くとしよう。


人が集まる場所には村や街が存在してもおかしくはない。

跡を辿っていくと街の影が見えてきた。

道中盗賊などには合わなかったのできっちり間引かれているのかもしれない。


遠くから見えてはいたが、近づくにつれてより形がはっきりしてくる。

なかなかに大きな街だ。

外壁はしっかりと聳え立ち《そびえたち》、魔物の侵入を阻んでいる。

並んでいる列があるのは入国手続きをする為の門でもあるのだろう。


多分金銭を要求されるが私には持ち合わせがない。

事情を説明するとして、街の中に入れてくれるといいのだが…。


「次!身分を証明するものはあるか?」


「すまないが持ち合わせてはいないな。


長い事辺鄙な所で鍛錬をしていた為お金の持ち合わせもない」


「そうだな…何かお金になりそうな物は持っているか?」


「自分が狩った魔物の部位ならあるが…」


オークの首を出すとざわつくが、持ってきたのがこれしかないのだ。

申し訳ない。


「オークか。


ギルドの職員に査定して貰って換金して貰った分から通行料を差し引くという事も出来るが…」


「それでお願いしたい」


「今使いを走らせましたので、職員が到着するまでお待ちください」


ここの衛兵は良い人のようだ。

街の治安もそれなりに良い事だろう。

ギルド職員は数分でやって来て、簡易的な査定をした後に通行料を差し引いた差額を私に渡して去っていった。


「お待たせしました。


ようこそ、テネスの街へ」


まだ日が暮れるまで時間がある。

この街を散策するとしよう。

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