第17話
50年、100年と私は剣の修練と近接格闘の修練、魔法の修練を毎日続けた。
日によっては魔物を倒し、日によっては木を的にして修練を重ねた。
その成果として木剣で木を切断出来る様になった。
素手でオークの頑強な筋肉を貫ける様になった。
蹴りで魔物の首を落とせる様になった。
何故か?
修練を重ねる内に気づいた事だが、どんな物にも他よりも弱い箇所というものが存在する。
それが木だろうと岩だろうとオークの頑強な筋肉だろうが関係なく存在する。
何十年と重ねる内にそれを見極める目が鍛えられた。
表面だけを見るのではなく性質までをも見る事が必要だった。
色んな物を割ったり、解体したりした。
石を割ってどこが密集している箇所でどこが他よりも弱い箇所なのか。
筋肉も木も中身はある意味同じ、密集している箇所と他よりも弱い箇所がある。
それを見極めながら他よりも弱い箇所を攻撃すれば簡単に壊れる。
魔法に関しても同じだった。
慣れない中級や上級の魔法を使っても密度を上げた初級魔法をぶつけると中級や上級魔法の方が押し負けてしまうのだ。
何故か?
初級の魔法はボール、まさしく球体だ。
球体は密度を均一に保つ為に最も適した形だったのだ。
竜巻の様な形や槍の様な形の魔法もあったが、それに気づいてからはボールの魔法しか使わなくなった。
魔法は魔力の密度で強さが決まる、それが私が到達した真理。
しかも初級の魔力量では魔法の威力も初級程度になるが、魔力を更に注いで密度を上げていくとそれに比例して威力も上がっていくのだ。
初級の魔法が中級や上級魔法を突き抜け、魔法を掻き消すなど何とも面白いではないか。
これぞ魔力の基礎にして奥義。
そして魔法に関してはもう幾つか。
前に言っていた詠唱を完全に破棄する事が出来る様になった。
頭の中で使いたい属性の魔法を思い浮かべると属性の変換が始まる。
後はそれを自分が使いたい形に形作ってやればいい。
そもそも詠唱とは補助輪みたいなものだったのだ。
その言葉を言うと魔力を使いたい属性に変換する手助けをしてくれ、使いたい形に整えてくれる。
ファイヤボールで例を挙げるならば、「ファイヤ」の部分で魔力を火の魔力に変換する手助けをし、「ボール」の部分で球体の形に整えてくれるという訳だ。
もちろん必要最低限の発動する魔力は必要になってくるが、それさえクリアすれば誰でも使える様になっている。
なかなかよく出来た仕組みだ。
もう一つは魔素の扱いの精度の向上だ。
自分は以前魔力を呼び水にして一定の範囲の魔素を自由に扱う事に成功した。
その範囲をかなり広げる事が出来た。
そして、私がかなりの時間を費やし、思考錯誤して到達したのが属性無しで魔力を扱う事だ。
この世界には無属性魔法というものは存在しない。
なぜなら詠唱という補助輪があるからだ。
ただ属性を付与してしまうと可視化される。
敵と戦う為にはそれだと対策を取られてしまう。
使う属性の魔法が見えるのだから、自分は有利な相性の魔法を使えばいい。
だから私は考えた。
完全に属性のない無色透明な魔法は使えないのか、と。
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