第15話

まず最初に勝ち目があるのかを計算するとしよう。


今は向こうが気付いておらず、私だけが目標を認識している状態。

つまりは奇襲が出来る。

相手の攻撃を受ける心配なく、確実に一撃を入れる事が出来る状態はかなり有利ではある。


理想的な流れとしては奇襲の一撃で相手を倒しきる事。

しかし、私にはそこまでの瞬間攻撃力はない。

使える武器は素手、木剣、初級魔法のみ。

魔法を絶え間なく相手に浴びせられるならばもしくは、といったところか。


近接武器では距離を詰める過程で気づかれる恐れがある。

普通の人間相手ならまだしも、あの頑強な筋肉の前では効果が薄そうだ。


ならば使える選択肢は魔法のみ。

だとすれば一番倒せる可能性があるカードは…


「アクアボール」


自分の魔力を呼び水にして遠隔からアクアボールをオークの顔面を完全に覆う様に発動。

そしてその場に維持させる。

魔力は維持している間消費するものの、一つだけなら1日程度は余裕で維持出来る。


狙うは溺死。

今の私の実力でオークを倒し切るにはこれしか存在しない。

撤退も考えたが、この場で倒してしまう方が後々のリスクが少ないと判断した。


生物である以上呼吸出来なければ死ぬのは変わらないはず。

後は暴れるのは承知しているので細かくアクアボールの位置をしっかりと顔全体を覆う様にすれば良い。


時間にして三十分程、ついにオークが倒れた。

ただ、少し離れているのでまだちゃんと死んでいるかの確認をしていない。

しっかりと死んでいる事を確認するまではアクアボールは維持。

最後までしっかり気をつけなければこちらがやられるのは目に見えている。


オークに近寄り、死んでいるかの確認を行う。

アクアボールは維持したまま、木剣で身体の色んな場所を殴ってみるが反応なし。

腕や足をファイヤボールで攻撃しても炙っても反応なし。

アクアボールの中にある顔は苦悶の表情を浮かべている。

瞳孔を見ての死亡判断も出来れば良かったのだが、曖昧な知識なのでアテには出来ない。


敵側の心理としては必ず近寄ってくるタイミングで攻撃を加えたいだろうから、死んだフリをして近寄って来た所を狙うのは十分あり得る。

だから私は入念にチェックする。

万が一があってからでは遅いのだ。

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