第14話

翌日、いつもの拠点近辺よりももっと深くに歩を進める。


先日考えた魔物との戦闘を考えての事だ。

拠点近辺を隈なく探索してみたが魔物等の姿は見当たらなかった。

本当に修練だけを考えるだけならあそこ以上にぴったりな場所はないだろう。

神様には感謝をしてもしきれないな。


本は読んだが知識だけで完結しているのと実物を見ているのとでは天と地の差がある。

魔物の脅威や攻撃方法等は本に載っていたが、実際の動き、クセ、思考パターンまでは解らない。

だから早めに本物を知っておきたい。


少しずつ奥に進んでいくと、色んな物音が聞こえてくる。

草の揺れる音、何かが移動する音、ズシンと身体に響く振動、グチャグチャと何かを咀嚼しているかの様な耳障りな音。


その音の方に目を向けると、ゴブリン等とは数倍以上違う逞しい体躯、豚の様な鼻、手には何かの骨らしい棍棒。


「オークか…なかなか強そうではある」


物語やゲームでは最初にはゴブリンやスライム等の弱い魔物が出てくる事が多いが、そんなご都合主義などありはしない。


現実はままならない事が幾度となく起こるのだ。

それを今あるカードでどの様に凌いでいくか、それに尽きる。


世の平均が解らない私にとって、自分の能力がどの程度のものかは判断しかねるが決して強くはないだろう。

運動もあまりして来なかった30代がが10年努力したとしても、目の前のオークに勝てる未来が見えない。


魔法は多少使える様にはなったが初級のみ、魔力量はおそらく平均値程、体力は全力で動いたとしてもそんなに長くは保たないだろう、剣や素手での格闘術に関しては比較対象がいないが、少しかじった程度。


こんな状態でオークのあの頑強そうな身体とパワー、耐久力を抜けるとはとてもではあるが思えない。

逆に向こうの攻撃を喰らえば即死はなくとも致命傷を受けるだろう。


近づかせずに遠距離から確実に倒す事が理想、近接戦闘は分が悪いか。

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