第7話

しかし、これでこそ成長する実感があるというものだ。


最初からレベル最大のRPGなど何も面白くはない。

面白かったとしても暴力で敵を薙ぎ払える最初だけ、後はストーリーをなぞるだけのただの作業と化してしまう。


こうして自分に足りない物を考え、工夫し、自らを高めていく事からこそ面白いし、生きている実感が湧く。


思考が脇道に逸れたな。

まずはこのファイヤボールには何が足りないのか考えなくてはいけない。


単純に魔力自体が足りないのか、魔力を制御する力か、それとも別の要因か。


よく科学の知識を応用して魔法の威力を上げるという手法があるが取り入れてみるのはどうか?


…どうやら違ったようだ。

試してもさっきと同じ結果にしかならない。


魔力に関しては最大値が解らないから何とも言えない。

よくあるステータスウィンドウみたいなものを見る事は出来なかったからだ。


この世界も現実であり、ゲームではない。

そんな便利な物はないが、スキルがあるのは言質が取れている。


神に近しいであろう存在が嘘をつく訳がないだろうし、ついたとしても意味がない。


「魔法の習得に関しては一旦置いて、魔力に対して知識を深めるべきか」


ファイヤボールを合計3回使った後は魔力が尽きたのか発動すらしなくなった。


今現在の魔力ではあのファイヤボール3回が限度という事だ。


「少し倦怠感が出てきたな、昨日は一睡もせずに魔力の感知に費やしたから当然かもしれん」


少し仮眠を取ってから木剣を持って素振りをしよう。

魔力の回復条件は解らないが、無駄な時間は過ごしてはいけない。

魔力は別として体力もつけなければいざという時に動けなくなってしまう。


少し仮眠を取り、起きたのは日暮れ前。

ぐっすりと眠れたのか身体の疲れがしっかり取れている。

前世では不眠症だった私にとって、魔法を使えた事よりぐっすり眠れた事の方が感動を覚えた。


「しかし、一体どのくらいの時間が経ったのだろうか?」


死ぬ前にしていた腕時計はもちろん無くなっている。

正確な時間を測る術は今の所ないが、困った事はあまりない。

時間に縛られない生活というのも悪くないかもしれないな。


だが、何日経ったかを知るのは必要だ。

エルフ並の長い時間を要求したとはいえ、寿命はあるはず。

明日からきっちり地面にでも印を書く等してどの位の日が経ったか計算するとしよう。


大体のスケジュールとしては朝に木剣で素振り、昼に木を目標に正拳突きと蹴りを、日が暮れてからは魔法の練習及び考察といった所か。


休憩に関しては間に少し挟めば問題ないだろう。

何日か続けてみて無理がある所は修正し、最適な時間の使い方を模索していくとしよう。

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