第6話

拠点の近くを探索した結果、水の確保は出来たが食料に関しては及第点と言った所だろうか。


木の実等は収穫して来たが、安全性は確認出来てはいない為食べる事が出来ないからだ。


一か八か食べて確認してみるという漫画みたいな事はしない。


もし毒でもあろうものなら最悪死んでしまうのだ。


空腹ではあるが仕方あるまい、初日の段階でその選択肢を選ぶには早すぎる。


空腹を紛らわす為に魔法に関する書物でも読むとしよう。


「全く見た事がない言語にも関わらず書いてある事が解るというのも不思議なものだな」


おかげで魔法の習得に向けて即踏み出せるのは有り難い。


書物に書いてあるのはどうやら初心者向けの内容のようだ。


今の私に最も必要なものであるし、色んな道においても基本をしっかりしておけば間違った方向に行く事はほぼない。


たまに感覚がモノをいう部分が出てくるが、それは何度も繰り返して身につければ済む事で大した問題ではない。


今の私には時間がある、ゆっくり確実にやっていけばいいのだ。


「まずは自分の魔力を認識する所からか」


ここには師などに魔力を送り込んでもらって知覚する方法は書いてあるが、私にはそれは出来ない。


とりあえず一番集中出来る姿勢を取り、目を閉じる。


視覚を遮断し、他の感覚に目を向ける為だが一向に魔力とやらを感じる事が出来ない。


自分に才能が無いのは解りきっていた事、ならば出来る様になるまでやればいい。


私の前世には魔力なんてものは無かった為、普段は感じないものを探せばいいとは漫画などではよく言われているが、そんな考えをしただけですぐに出来る様になる方が珍しいのだ。


そんな天才達とは違う私が出来るのは解るまでやる、ただそれだけ。


結局これが魔力なのか?と感じ取る事が出来たのは夜が明けてからだった。


魔力らしきものを感じ取れた私はまず魔力の流れを追う事にしてみた。


心臓から始まり、全身に巡ってまた心臓へと帰ってくる。


なるほど、魔力とは血液と似たような感じで身体の中に留まっているようだ。


それを体外に放出し、何らかの事象を引き起こすのが魔法という事か。


そしてその事象を引き起こす為の鍵となるのが詠唱であると。


本に書いてある物で初心者向けの魔法を少し試してみるとしよう。


「ふむ…『ファイヤボール』」


目の前に小指の先程しかない大きさの火の玉が数秒現れて消えていった。


どうやら先は長そうである。

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