15日目

車でガタゴトと10㎞走る。途中道がなくなってたから、ホントにガタゴトだった。

シートベルトがなければ、今頃ツキ辺りは車から飛び出てしまっていただろう。

それでも後部座席の4人は楽しそうだった。銀杏くんが「笑うと舌を噛むぞ」と言ってもケタケタ笑っていた。

アイコンからMAPを見ながら進む。虫食いのMAPが進んでいくと見えていくタイプだ。トールが言った通り、まるで砦のような建物が見えてきた。

入口以外からは入れないように、深い水堀と有刺鉄線が張り巡らせてある。

【交換屋ミサキ】

と、入口の看板に書かれていた。

車にコトミと3人のちびっ子を残して2人で入口に近づく。


「おーい、誰か!いるなら開けてくれ~!」


まるで銀杏くんの声に合わせて重厚な扉が開く。

ゴゴゴゴゴ

大丈夫かこの扉。錆びてないか?


「やあやあ、人間が来るのは久方ぶりだよ~。いらっしゃ~い。交換屋ミサキへようこそ~。」


現れたのは20前後の男だか女だかわからない中性的な雰囲気の人だった。


「なんでも交換できるよ~。言ってごらんよ~。」


ユルい。よくこれでゾンビ世界を生きてこれたなあ。


「こちらの持ってる野菜で、弾薬と情報を交換してほしい。」

「はいは~い。まいど~。」


車に積んでいた食べきれない野菜をみんなで運び込む。


「いっぱいありますね~。」


弾薬を大量にもらう。

こんなにあったら、自分で使えばいいのではないか?


「交換屋ですから~。自衛用の武器はほかにもあるから大丈夫ですよ~。」


朗らかに笑う交換屋。


「で、何の情報が欲しいんですか~?」

「まず、交換相手は誰なんだ?」

「え~!取引先は言えませんよ~!」

「はぐらかさないでくれ。プレイヤーか?NPCか?」

「どっちもですかね~。」

「で、交換屋はどっちなんだ?」

「NPCですよ~!だから殺されないでくださいね~><」

「なんでこの世界は死ぬとゾンビになるんだ?」

「10年前にパンデミック?が起きたようです~。ゾンビに噛まれるか、肺に少しでもゾンビ砂が入ると、ゾンビになっちゃうみたいですよ~。」

「プレイヤーに勝利条件はあるのか?」

「それはわかりませんね~。誰もクリアしてないからこの世界は終わってないんじゃないですか~?」

「元の世界に帰りたいんだ。」

「今のところそれもわかりませんね~。」


交換屋は口元に指でバッテンを作って


「とりあえず話せるのはここまでですかね~。また必要なら交換物資を持ってきてくださいな~」


「最後にこれだけ教えてくれ。近隣で人間がいるのはどこだ?」


銀杏くんはポイっと交換屋のほうに手のひら大の金塊を放り投げる。

えぇ、金塊なんてもってたの?


「わお、すごいのもってますねえ~。ここから西に5㎞に、NPCの集落がありますよ~。」


「ありがとう、またくるぜ。」


たかしは聞かなくてよかったのか?と、話を促してくれたが、すべて銀杏くんが聞いてくれたから問題なかった。


車の中に戻ると、コトミが深刻そうな顔をしていた。


「今まで聞いてこなかったけど、プレイヤーとNPCってなに?」


顔を見合わせる僕と銀杏くん。


「う~んとね。すごく簡単に言うと、僕ら二人は、死ねないみたい。」

「ゾンビにならないの?」

「そうみたい」

「あ~、しまったな。ついでに不老なのかもきいときゃよかったぜ!」


助手席の銀杏くんの疑問に、僕はなるほどと思った。

僕らは歳を取るのだろうか?


「そして、たぶん、僕らはスキルが使えるけど、コトミたちは使えない」

「スキル?」

「うん、このスキルのおかげで銃を撃ったり、野菜が作れたりする。」

「そっか。君たち2人はすごいんだね。」

「おーほっほっほっほ!我が夫は無敵の男なのじゃ~!」


レナがまたお嬢化している。


そっか。僕ら2人はすごいのか。

俺TUEEEまではいかないけど、特別なのかと思うと、ちょっと安心した。

この力を使って、ゾンビからみんなを守るために大きな街を作れたらいいな。


今度は西へ向かう。5㎞なんてすぐだった。

途中、シートベルトを外したレナが運転席にすっ飛んできて、危うく事故になるところだった。



集落はすぐに発見できた。

だけどそれは、まるで貧民街というか…

木組みで簡単につくられた小屋がいくつか並んでいた。

今度は、僕一人で聞き込みをするため車を降りた。


「この集落の代表者さんはいますか?」


手近な家に見えた人影がいたので話しかける。


「一番奥だよ。案内してやろう。」


ん?話が早いな。よく人が来るのだろうか?

案内された先は、他の小屋より少し大きく、かつ少しキレイな家だった。


「はじめまして、旅のお方。ようこそ村へ。」


そこには目に包帯をした老人がいた。


「済まないね。目が見えないのだ。生い先短い私を許しておくれ。」


許す許さないじゃないですよ。

よくこんな世界で生きてるだけですごいですよ。


「ありがとう。ご用件をお伺いしましょう。」


あなた方を助けに来ました。


「ほう、助けに。」


今日はその村で休むことになった


続く






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