14日目


「よォ、お前らはどっちだ?」


軍服を着た男は飄々とした様子でこちらに近づいてくる。

手にしたスナイパーライフルを手でもてあそびながら。


タァン!


シュウが引き金をひき、乾いた音が鳴り響く。

男は避けようともしなかった。確かに右わき腹に当たったはずであるのに、平気な顔をしている。


「はーはっはッ、いてえな!久しぶりだ!この痛みはよォ!」


男は自然な動作でライフルを構えてシュウに狙いを定める。

ドゥン!


赤い血が舞う。




その日は雲一つない晴天だった。

車を運転してプレイヤー探しの旅を始めた。

最初は楽しいドライブだった。

銀杏くんが歌い、みんなで合いの手を入れて、わいのわいの騒いだ。

あの男に会ったのは二つ目の町へ入ったところだ。

入口から妙だった。

ゾンビがまったくいないのだ。

だから、銀杏くんは誰かいるんだと直感していたようだった。

車のフロントを射撃されたと気づいたのは、銀杏くんが


「伏せろ!」


と言ったからだ。

その声に合わせて僕以外が車内で伏せる。

エンジンを噴かせ、すぐそばの家の曲がり角で急停車。

車を盾にしてみんなを降ろし、子どもたちをコトミに任せ、僕と銀杏くんで前に出る。

撃ったのは、手前のビルだった。

これも銀杏くんが気づいていた。

2人で目で合図して、銀杏くんが大きく響き渡る声で話しかけた。


「いるんだろ!出て来いよ!敵意はない!話しがしたい!」


間。


そして男の声がかえってくる。


「何人いる!全員顔を見せろ!」


ビルと家に反響して位置はつかめない。

銀杏くんが僕を見てコクリと頷く。


「6人だ!今、全員顔を出す!撃たないでくれ!」


「OK!わかった!いいだろう!」


言う通りに6人全員が道に立ったところで、ビルの出入り口と思わしき所から男がゆっくり出てきた。


「初めましてみなさん。俺の名前はトールだ。よろしくな。」


金髪に青い瞳。軍服と思わしき迷彩服を着ている。


「初めまして。トールさん。俺の名前は銀杏、こっちはたかしだ。」


一通り挨拶する。


「まさか6人も人がまとまってるとはな。」


「トールさんは、ここに来てどれくらい経つんですか?」


「ん?ああ、200日くらいだな。」


「この世界のことどう思います?」


「…。ロクなとこじゃねえよ。」


「じゃあ、トールさん…あなた、プレイヤーですね?」


「そうだな。」

言いつつ、トールはハンドガンを抜き放ち、銀杏くんに向けて発砲した。

ダァン!

響き渡る音と同時に隣にいた銀杏くんが俯く。

見れば銀杏くんの左太ももから血がでていた。


「あんた!なにするんだ!」


「よぉ、お前らはどっちだ?」


軍服を着た男は飄々とした様子でこちらに近づいてくる。

左手に持ったスナイパーライフルをもてあそびながら。


タァン!


横にいたシュウがハンドガンの引き金をひき、乾いた音が鳴り響く。

男は避けようともしなかった。確かに右わき腹に当たったはずであるのに、平気な顔をしている。


「はーはっはっ、いてえな!久しぶりだ!この痛みはよぉ!」


男は自然な動作でライフルを構えてシュウに狙いを定める。

ドゥン!


赤い血が舞う。


すんでのところで僕がシュウをかばった。


実際に撃たれたらもっと痛いのだろうけど、耐えられる痛みだ。


28/100  流血


だいぶダメージがあるけど、まだ飛ばされないで済みそうだ。


「あんたら2人はプレイヤーだな?痛そうじゃないもんな?」


トールもわき腹からどくどくと血を流しながらその場び座り込む。


「おいおい、いきなり撃っといてそりゃないぜ?」


銀杏くんは口だけ笑って言い放つ。

銀杏 49/100 流血


「はッ!元気そうじゃねえか?気に入ったぜ。」


トールのニヤニヤがムカつく。シュウを狙ったことも許せない。


「引っ掛けるような聞き方で悪かった。やっぱりここはゲームの世界なのか?」


「確たる証拠はねェ。だが、それに近いもんだとは思っている。」


「協力は?」


「するつもりはねェよ。1人でもう200日も生きてきたんだ。もう一通りのスキル揃ってるし、誰かを頼る段階はもう過ぎてるんだ。」


言って、包帯を2個投げてよこす。

使用するを選択すると流血が無くなり、体力が回復する。


「包帯なんざよォ、100個単位であるぞ。」


「元の世界に帰りたいと思わないのか?」


「帰ってもロクなことはねェからな。ラクさせてもらうつもりだ。今のほうが自由だからな。お前らも楽しんでるだろ?」


「まだわからない。俺たち二人はまだ2週間しか経ってないんだ」


「オイオイ、まだヒヨッコじゃねェか。悪かったな、撃っちまってな。」


全然悪びれていない。


「欲しいモンがあるなら、ここから10㎞北に行くと、交換屋がある。そこで話も聞けるだろうさァ。」


「ありがとう。」


「なァに。もう会うこともねェだろうからな。」


つまり、もう来るなってことか。


トールと別れを告げて車に乗り込み、交換屋に向けて走り出す。


今夜は車中泊だ。


つづく




















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