13日目

「ねえ、銀杏くん」


朝、教会の二階部分で見張ってくれている銀杏くんに話しかける。


「どうした?今日もいい天気だな。」


笑顔でこちらを向く銀杏くん。


「この世界はなんなんだろう。」

「急にどうした。」


僕の問いかけに怪訝な顔を見せる。


「僕たちはいつ夢から覚めるのかな?」


少し考えこむ銀杏くん。


「夢…なんだろうか?」

「やっぱりそう思うよね。夢にしてはリアルだし、もう二週間近くここで生活してるけど、一向に覚める気配がない。夢の中で夢を見る回数も増えてる。」


現実の僕は、何日寝てるんだ?

一日なのか、連動して2週間も寝ていたら身体がおかしくなっていそうだ。



「別の世界、特にゲームの世界に飛ばされたって考えるほうが自然な気がしてるぜ。」


銀杏くんも真面目な顔をして言う。


「うん。何回でも死ねること、スキルがあること、視界にゲームアイコンのような表示があることが、ゲーム世界であることを示していると思う。」


でも、なんでこの世界に来たのか、なぜ僕らは死なないのかわからない。

よくラノベにあるような異世界転生?人類が滅びた未来に飛んできた?

どっちにしても、僕らの体力バーが見えることがおかしい。便利すぎる。


「もしゲームってんなら、クリア条件があるんじゃないか?」

「あるのかな?クリア条件。」

「無い場合もあるか。ゲームによっちゃ。」


スキル欄にもステータスバーにも、勝利条件は表示されていない。

この世界でどうしたらいいのか、わからない。


「僕ら、元の世界に帰れると思う?」

「…わからね。」


これが一番、肝心だった。

僕にも銀杏くんにも元の世界での生活がある。

特に銀杏くんはこれが夢でないなら、もう二週間、学校に行っていない。


「もしこれがゲームなんだとしたらさ、僕ら以外にもプレイヤーがいると思うんだ。」

「それはあり得るな。」

「探そうよ。他のプレイヤー。何か知ってるかもしれない。」

「そう簡単に見つかるか?コトミたちのようなNPCばっかりだって可能性もある。」


NPCたち。死んだらゾンビになる存在。コトミやシュウたち3人もいつかゾンビになってしまうのか。なんとか回避できる方法はないのか。


「プレイヤー探しに重要なスキルをとったよ。【車上荒らし】と【運転】。これできっと、前回動かせなかった車が使えるようになるみたいなんだ。」


「よし、試してみようぜ。」


3人の子どもたちのお守りをコトミに任せ、近くの町に出かける二人。


出来ることなら6人乗れるサイズの車がいい。バンか、バスだ。


「あったぞ。ミニバンだ。なんとか6人座れそうだ。」


小一時間探しての銀杏くんの通信。

急いで駆けつけて、スキル車上荒らしでドアをあけ、中を調べる。

ちょっと汚いので、帰ったらまずは掃除だな。スキルのおかげでキーなしでもエンジンがかかる。どうなっとんじゃ。スキル便利すぎる。


銀杏くんとドライブして教会に戻る。ガソリンも申し分ないほど入っていた。


「おお~!すっげェ~!乗ってみてえ!」


一番初めにツキが車に食いついた。

マトモに動いてる車など見たことがないだろう。


「私も乗ってみたい。」


コトミも目を輝かせていた。

6人乗ってみると後ろの席がいっぱいいっぱいだが、乗れれば問題あるまい。

ゴトゴトと近くの小川まで行って、軽く中と外を洗車する。


ついでにみんなで水浴びした。

ちゃんと女子と男子は分けました!

レナが僕と遊びたがっていたが、コトミに連行してもらった。


今後も水浴びせにゃ、気持ち悪いなと思いつつ。

こんな楽しい日が毎日続けばいいのに。

明日からはこの世界の謎を解くための人間探しをしなくては。


早めに寝る。

もちろん、コトミと銀杏くんと3人の見張りローテーションを崩さずに。


続く






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