12日目

「たかし、関所作ろうぜ。」


朝起きて銀杏からの第一声がそれだった。


「僕らのほかに誰もいないのに関所つくってどうするの?」

「そうかな?たぶん、探せばもっといるんじゃないかなって感じてるぜ?」

「だとしても、なんで関所?」

「別にお金を取るつもりはねえよ。ただ、大きな道に関所みたいなものをつくっておけば、もし誰か通りかかったら怪しむだろう?」

「それは怪しむね。誰かいないかって思うかもしれないね。」

「というわけで二人で分担してスキルを取ろうぜ。」

「わかった。」


銀杏くんは、木を切って木材にするスキルと、穴を掘って石材にするスキルをとり、僕は材料を使って建築するスキルをとった。

銀杏くんはこのためにスキルポイントをずいぶん使ったみたいだけど、まだ余裕があるみたいだった。僕も先日のゾンビ襲来でポイントがだいぶ貯まっている。


「全部使い切るなよ?なにかあったとき用に常に余裕を持たせておこう。」


6人で建築作業が始まった。

銀杏、コトミ、シュウで切り出しを。

たかし、レナ、ツキで建築をする。


銀杏くんがちょっと大変そうだった。木を切るための斧をクラフトして、ずっと斬っている。気が倒れると、自動的に建築に使いやすそうな木材に代わる。コトミとシュウは出来た木材をひたすら僕のもとへと運ぶ。コンパクトになってるとはいえ、木材なので、そこそこ重いのだ。

コトミは息も切らさないで作業していたが、シュウは顔を真っ赤にしながら頑張ってくれた。7歳でここまでしてくれるのだ。とてもありがたい。


「みんなが頑張ってるのに、僕は何もしないなんて耐えられないよ。」


笑顔でシュウは言ってくれた。いいんだよ、シュウ、無理しないでね。

ツキなんかずっとさっきから、ただ走り回ってるよ。疲れたら休憩してね。



建築のほうは、スキルがあるので、木材を置いてトンカチでひと殴りすると思い通りのブロックになった。


「さすが我が夫!なんでもできますわね!おーほっほっほっほ。」


どうしたレナ。今日はなんかお嬢だ。


「イエーイ!イエーイ!」


ツキは元気だ。騒いでるうちはこの道付近は安全だろう。

もしゾンビがきたらすぐ呼べと言ってある。大丈夫だろう。大丈夫であってくれ。


スキルでブロックができるのはいいが、キレイにならべて小屋(希望は関所)にするにはセンスが必要だった。

こんなことなら、クラフト系のゲームをもっとやっておけばよかった。FPSばっかりやってたから、こういう建築のとき、どんな建物にしようとか想像がつかない。

とりあえず道の上に凱旋門みたいなアーチとトンネル状にしていけばいいか?


「では我が夫!正面と出口にペンキで関所って書いておきましょう!」


うーん、字は得意じゃないんだよな。


「字なら、ツキが得意ですわ。」

「え?そうなの?」


思わず疑ってしまった。

とりあえずツキを捕まえて書かせてみる。


「@@@」


ん?読めない。


「ちゃんと関所と、書いてありますわよ。」


そっか、ならいいけど。


ひょっとして、僕ら、この世界の文字読めないんじゃないか?


ためしにツキに地面に小枝で文字を書いてもらったが、どれも読めなかった。


「どう思う?銀杏くん。」

「前にビルの屋上に行ったとき、SOSは読めたけどな…これは、コトミたちと会話が出来ることをラッキーとおもわなきゃな。」

「コトバが通じるスキルでもあるのかな?」

「わからん。探せば、文字を読むスキルもあるのかもしれない」


謎がまた一つ増えた。ツキが文字を書けて、尚且つ上手だというのだ。

ツキよ、君はいったい何者なんだい?


ちなみにレナは何が得意?


「わたくしは、お掃除と洗濯が得意ですわ!」

「おお!家事が得意なの素晴らしいよね。毎日ありがとう。」

「んもう、プロポーズはもっと気の利いた場所でしてくださる?台無しでしてよ?」


今日もレナはいつにも増して暴走してるな。

早く小屋を完成させて銀杏くんに合流しよう。


とんかんてん、とんかんてん。

あれ?トンカチの擬音ってこれであってる?

でも、僕にはこう聞こえるんだよね。


夕方には木製の凱旋門みたいなトンネルな小屋が出来上がる。

自分で言ってて、なんて不思議な建物を作ってしまったのだろうと思う。

急造なので、誰が見ても手作り感満載だ。

これで、誰かがここを通りかかったら、他人がいることがわかるだろう。

木造のドアには仕掛けがしてあって、通ると地面が少し削れて跡が残るようにしてある。

完璧までは言えないが、僕なりに頑張った。


「すごいです旦那様!たった半日で素晴らしい建物ができましたわ!」


レナのキャラが変わった。


「お?すごいじゃないかたかし、お前にこんな才能があったなんて知らなかったぜ。頼んでよかったよ。」


ありがとう銀杏くん。


「くぅ、本当なら、ここにトラップの一つや二つ仕掛けたかったなぁ」


ダメだよ銀杏くん。けが人もしくは死人をだしてはいけない。

目的が変わってるじゃないか。



今夜は収穫した野菜でささやかながらパーティをした。

関所建築記念だそうだ。


我ながら作った野菜スープは絶品だった。

この世界にコンソメとかないかな。ないだろうな。

あと塩。

調味料が足らん。

素材の味は楽しめるけれども。

欲しいものは後から後から出てくるものだなと思い、眠りにつく。



続く












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