第27話バイト

 次の日から、やたらと小高に話しかけられうようになった。最初のうちはめんどくさくて逃げたり無視したりしていたのだが、だんだんそっちの方がめんどくさいことに気づいて適当に受け流すことにした。

 

「ねぇ、明日休日だけどどうする?」


「どうするって何かな? 僕は別に小高さんと会う予定はなかったと思うんだけど……」


「そうだっけ? じゃあ今入れる」


「ごめん。明日は用事があるから」


「いや絶対うそでしょ。遊ぶ友達もいないのに何すんのよ」


「別に小高さんには関係ないだろ。あと仮に僕の家に来ても多分出ないから」


「居留守使うってこと? じゃあ一日中家のまえに居座っとく」


「……」


 なんて会話を、今週ずっとしている。今日は金曜日だ。明日の予定は特にないが、小高とは何がなんでも会いたくない。だからどこかに出掛けようと考えている。とりあえず買い出しに行くか。

 そんなことをぽかーんと黒板を見ながら考える。

 そして次の日。ぐっと体を伸ばして布団から起き上がる。さて、買い出しに行く準備をするか。休日は平日よりも遅く起きる。先週は花道と予定があったから早く起きたが、今日は何もないのでかなり遅い時間だ。

 もう少しで昼ご飯を食べる時間になろうとしている。適当な服を着て、必要最低限のものだけをズボンのポケットに入れると、家をでていく。出て行く直前であることを思い出す。

 そういえば最近財布の中身が涼しくなってきた頃だ。そろそろ銀行から金を下ろさなくてはいけない。俺は一旦家の中に戻り、バックを手に持つとその中に通帳を入れる。最近はどこでも金を下ろせるのがとても便利だ。

 近くのコンビニに向かうと、早速お金を下ろそうとするが……。


「1132円……!?」


 思わず声が漏れる。なんだこれ? こんなのでどうやって生活していけばいいんだよ。そういえば前に、バイトしなくいとな……みたいなことを思ったが、めんどくさいから後回しにした記憶がある。

 どうする? 今からバイトを探すか? ネットとかならすぐに見つかるだろうし、今から探すか? いやでもどうせ安いしな……。

 俺はバイトが嫌いだ。これまでの人生で一回もした経験がないが、とにかく嫌いだ。俺がこんなギリギリになるまで頑なにバイトをやってこなかったのには、それなりの理由がある。

 まず安い。時給1000円超えるかどうかの値段で働くなんて、正直馬鹿らしい。これは俺が子役をやっていたと言うこともあり、少し金銭感覚が麻痺していると言うのも大きい。

 それに俺は顔がバレてはいけない。多分バレはしないと思うが、もしかしたら声などでバレる可能性もある。だからと言って、わざわざ遠いところに行きたくはない。

 だから近くで人前に出ずに、なおかつ時給2000円ぐらいの素晴らしいバイトじゃなきゃやりたくない。でもそんなものがあるはずもない。

 でも……どうしよう。小高から金借りるか? あいつならなんか簡単に貸してくれそうだし。なんてことを考えるが、頭を振ってその考えを改める。

 そんなクズ男みたいなこと、絶対にしたくない。だったら餓死した方がマシだ。

 俺は他に方法を考える。でも特に思いつかない。親父の元に帰るとか、いろいろ考えたがやっぱりダメだ。今更帰りたくないし、帰れるはずもない。やっぱりバイトするか……。

 とりあえず家の近くで探すか。まあ流石に声でバレるなんてことあるわけないよな。そもそも人と喋らんから、ほとんどの生徒は俺の声なんか知らないだろうし。俺はネットで近くのバイトを募集している場所を探す。

 スースーっとスクロールして、良さげな場所を探す。そこで、時給2500と言う数字が目についた。俺は見間違いかもしれないと目をこすり、もう一度よく見直すが、やはり2500円だ。なんだこれ? 幾ら何でも怪しすぎる。

 でも近くでこんだけ高額なら、多少怪しくても……。俺はとりあえずその概要を見てみる。


「えーと、西園寺邸の執事とメイド募集? 募集人数のこり一人!?」


 ま、まずい。誰かに取られてしまう。とりあえず応募しとくか? いや、この場所はここから結構近い。このまま直接行って、雇ってもらおう。

 そんなことを考え、俺は走ってその屋敷に向かう。
























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