第24話焦り

 次の日の朝……。俺は普段と同じように、一言も発さずにいつも通りの時間、自分の席に座る。ぽすっと目立たないよう静かーに座ると、後ろから視線を感じた。


「ねぇ……」


 そしてその視線の主は、案の定俺に声をかけてきた。そりゃそうだよな……。昨日

あんなところを見られたんだ。疑問に思わない方がおかしい。

 きっと花道と付き合ってるのか? なんて疑念を抱いているに違いない。

 正直な話、完全には否定しきれないため、あまり昨日の件については触れないでほしい。しかしそうもいかず、小高はしつこく話しかけてくる。


「ねぇ……。おーい……聞こえてますかー?」


 トントンとなんども肩を叩いてきて、かなり鬱陶うっとうしい。

 しかしこのまま無視する訳にはいかない。こいつには俺の秘密を知られてしまっている。下手に怒らせてバラされるわけにはいかない。


「えーと小高さん。僕に何か用かな?」


 白々しい態度をとる。そんな俺の態度に少し腹が立ったのか、小高は若干口調を強くして。


「な・に・か・よ・う・か・な? じゃないわよ! 正直に白状しないとバラすわよ」


 なんて脅しをかけてくる。はぁーだるすぎる……。お前には無関係だろ! と言ってやりたいが、その気持ちをぐっと押し込めて、俺は苦笑いを浮かべる。


「いやーははは……。本当に花道さんとはなんでもなくて……。ただ買い物に付き合ってただけだよ」


 後頭部を触りながら、俺は必死に誤魔化す。しかしそんなことで小高が納得するはずもなく、小高は目を細め。


「ふーん買い物ね……。でも昨日私とあんたはゲームセンターであった気がするんだけど、あれも買い物なのかしら?」


「あ……それは……」


 こいつ、バカなくせに……。てか俺も焦りすぎて言い訳が適当になってるな……。

 こんな脳みそ空っぽのバカを納得させるのなんて、ちょっと考えればできるだろ。

 俺は小高に対する最適解の返しを考える。その時、追撃がやってきた。


「あ、菊池くんおはよう! 昨日はありがとね!」


 なんでこのタイミングで来るんだよ! 俺は余計に焦り、目をぐるぐると回す。


「あ、めぐみちゃんもおはよ!」


「うん、おはよう……」


 小高はじーっと俺たち二人を睨んでいる。まずい……このままじゃ俺たちが偽の恋人とか言う意味のわからないことをしていることがバレる。

 いや……でも俺の素顔のことをバラされるよりは数倍マシだ。だったら正直に白状した方が。

 俺がうーんと言い悩んでいると、朝のホームルームの始まりを合図するチャイムが鳴った。


「ふん、命拾いしたわね」


 まさか現実でそんなことを言われる日が来るとは思わなかった。俺は安堵と不安により、情緒が壊れそうになっていた。






























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