第19話デート

 約束の時間の十分前。もうすぐ集合場所についてしまう。少し早かったかな? 

 でも遅れるよりはいいだろう。俺は乗ってきたバスにおり、集合場所である矢田駅に歩いて行く。矢田駅というのはついこの前に、憎っくき小高と一緒に買い物に行った場所だ。学校から一番近い駅であり、うちの学校の生徒はみんな買い物と言ったら矢田駅前のデパートだ。

 だから必然的に、同級生とあってしまう……。って、そうじゃん。同級生とあってしまうじゃねーよ! 

 俺は自分の心の中にツッコミを入れる。この姿で花道と歩いているのを見られるのは色々とまずい。良からぬうわさを立てられたり、とにかくこの状況を見られるのは非常によろしくない。とにかく花道と合流しなくてはと思い、少しだけ急ぎ足で集合場所に向かう。

 集合場所に着くと、携帯をいじっている花道の姿が見えた。まだ集合十分前だというのにもういるのか。きっと小さい頃からしっかり教育されてきたんだろな……。

 素晴らしいなーっと、感嘆かんたんの声を口に出さずに思う。俺は花道に近づくと花道も俺の姿に気づき、笑顔で手を振ってくる。

 花道はネイビーのワンピースにショートカーディガン。そして手には可愛いキャラのデザインが施されたトートバックを持っている。花道の容姿とスタイルの良さ、そしてそのファッションが大変よく映えるし目立っている。

 俺は花道に近づいて行く。

 

「えーと……待った?」


「全然待ってないよ。私も今来たところだから」


 なんかセリフ的に逆な気がするが、そんなことはどうでもいい。今はそれより。


「あのさ、急で悪いんだけど今から場所変えない?」


 そんな提案を花道に持ちかけると、花道はきょとんとした表情でどうしてと聞いてくる。


「いや別に大した理由じゃないんだけど……その、同級生とかに見られたら良からぬ噂とか流されそうだなーって」


 そんなことを言うと、花道は口に手を当てて軽く笑う。


「別にそんなの気にしなくていいのに。それに、そう言われるのって自分が目立ってるようでよくない?」


「…………そ、そうかな……?」


 俺は少し沈黙した後に、そんなことを返す。花道の言っている事には共感が持てない。生憎あいにく俺は目立つことがあまり好きじゃない。これは子役をやっていたからとかそう言うのとは一切関係なく、元から注目が自分に集まるのが得意じゃないのだ。

 だから花道の言っていることはよくわからない。もしかしたら彼女は注目を集めるのが好きなのだろうか? だから委員長なんて誰もやりたがらない役職を進んでやっているのか?

 ポケーっとそんなことを考えているが、よくわからない。そしてよくわからないうちに、俺は手首を掴まれて。


「ほら、早く行こ!」


 と無理やりデパートまで引っ張られていた。

 もうここまで来てしまったら神頼みしかない。頼むから同級生に見つからないこと。ぐっと心の中でお祈りをし、俺は半ば強制的にデパートへ引きづりこまれる。

 




























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