第18話久しい気持ち
その日の夜のこと。ピロンと携帯の通知音がなり、俺は携帯の電源を入れる。カチッとアイフォンの電源を入れると、そこには。
『こんにちは菊池くん。今日は色々と迷惑をかけてごめんなさい』
丁寧な文章で書かれた花道のラインがきた。そういえば人から連絡が来るのは久しぶりだな。中学の頃とかはよく仕事の連絡や女子からのメールがきていたが、高校になってから一通も来てないな……。
基本的に未読無視ばっかしていたせいでこう言うのは返し慣れてない。
「えーと『あまり気にしてないので大丈夫です。花道さんはあの後平気だった?』
ポチッと送信した後に、しまったと後悔する。文章に疑問符なんかつけたら会話が続いてしまう。そう思った矢先、案の定ピロンと通知音がなる。
『それが、奥谷さんが嘘っぽいから明日デートしろって言ってて……』
えぇ……まじかよ。あの人本当にストーカじゃないか。もう自分には脈がないことぐらい察しろよ。なんて諦めの悪い人なんだ……。
俺は忘れかけていた憤りを感じていた。ここで断るって訳にはいかないか?
明日用事がある的なことを言ってしまおうか。でももう嘘の彼氏になるって言ってしまったし、ここで断るのもなんだか悪い気が……。
そんなこと感じてしまい、俺は。
『わかりました。どこに行けばいいですか?』
なんて返す。そのあとはその後の予定とかを適当に話して会話を終わらせた。とても気が重い。
別に花道とデートするのが嫌とかではない。多くの男子からしたら羨ましいことこの上ないだろう。ただ俺はあまり人と深く関わりたくないのだ。俺が他人と深く関わるとろくな事にならない。
そう運命付けられてると感じるほど、俺が今まで深く関わってきた人間は不幸な目にあっている。はぁーと大きなため息を吐く。昔のことを少し思い出し、勝手に陰鬱な気持ちになる。俺は明日に備えてもう寝ようと、ベッドに入り瞼を閉じる。感覚がどんどんと底に
そして小鳥のさえずりを聞き目を覚ます。グッと背伸びをして、早速支度を始める。不思議なもので、昨日はあれほど嫌だと思っていたデートが今日になると楽しみになっていた。心は偽れないもので、俺は少し高揚している。
人と出かけるのなんてとても久しぶりだ。だから気持ちが高ぶっているんだ。人はなれないことをするときが一番楽しいものだ。
順応していない、当たり前じゃないものが楽しく感じる。だからきっと、この気持ちも始めだけ。
俺は久しく忘れていたこの気持ちのまま、準備を着々と進めていく。
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