第13話決意
俺は花道とともに廊下に出る。とりあえずあの場を
「それで花道さん。僕に用って……?」
そんな疑問をぶつけると、花道は少し口角を上げて。
「ごめん。本当は用事なんてないんだ。ただ菊池くんが困ってそうだったから……」
なんて事を言ってくる。本当に生徒のことをよく見てる子だ。それにあんなベストタイミングで助けてくれるなんて、なんて気が利くんだ。俺は感心しつつも花道にお礼の言葉を言う。
「ははは、見られてた? ちょっと小高さんにね……」
少しだけ言葉を濁す。俺がそう言うと花道は不安げな表情になり。
「大丈夫? もしかしていじめられてたりしてない? 何かあったら私が相談に乗るから!」
「あ、それは大丈夫。心配してくれてありがとう」
つくづく優しいな。でもこのことを花道に相談する訳にはいかない。最悪花道にも俺の正体がバレてしまう。それに実際いじめられているわけではないのだから、相談することなんて何もない。
花道はまだ信用してないのかジーと俺の顔を見ているが、ちらりと右腕につけている腕時計を確認すると。
「それじゃあそろそろ朝のホームルーム始まるから行くね。もしなんかあったら気にせずに私に言ってね! バイバイ」
ひらひらと手を振りながら、彼女は教室に戻って行った。さすが、校内一のモテる女は違う。何もかも飛び抜けていて、人に好かれない部分がない。俺がもし普通の生徒だったら真っ先に惚れてただろう。そんなことを思いながら、俺も教室に戻る。
教室に戻り自分の席に就こうとすると、ジッと小高が俺の方を凝視していた。そうだ……。今は何を差し置いてでもコイツの対処をしなくてはならない。どうにかして口止めをさせなくてはいけない。その方法を模索する。今日中になんとしてでも。
そう硬い決意をして俺は授業中ずっと思案する。脳内に考えつく限りの方法を巡らせる。そんなことをしている間にもう昼休みが来てしまった。だめだ思いつかねー。
どんなに考えを出しても、そのほとんどが非人道的なものになってしまう。だって普通に無理でしょ。こっちが弱みを握られてる状況でどうしろってんだ。こんな時にポンと
仕方ない……あれをやるか。この手だけは使いたくなかったが、もうなりふり構ってられない。4時間目の授業が終了するチャイムの音が鳴り止むと同時に、俺は後ろを向く。
「あの小高さん。昼休み時間ある?」
俺にいきなり声をかけられた小高は、ハッと顔を上げるとペン回しをやめて俺の方に顔を向けた。
「あぁ、やっと話す気になった? じゃあ友達に昼ごはん一緒に食べるの無理だって断りの電話入れるから待って」
「いや、僕は先に屋上にいるから小高さんもあとできて」
そう小高に言うと、俺は廊下に出て屋上に続く階段をのぼる。
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