第6話昼休み
「あの……さっきはごめんなさい!」
「いや、別に気にしてないから大丈夫だよ……」
そんなやりとりを、クラスから少し離れた廊下でする。あの後俺は、クラスメイトの嘲笑や罵倒を背中に受けながら、他の生徒がやる委員会を板書していた。そのあと花道に呼び出されて今に至る。
「別に仕事とか押しつけるつもりとか全然なくて、私はただあの場を収めるならああやって言うのが一番いいかなって……」
なんども頭を下げられる。こんなところを他の生徒に見られたら、また意味のわからない噂が広がりそうだ。
「僕も本当に気にしてないから、頭を上げてよ」
俺は花道をなだめるが、それでも花道は何度も頭を下げ続ける。うーん……。きっとこいつはとてもいいやつで、あんなことを言ったのも初めてだったんだろう。
だからものすごく罪悪感を感じてしまっている。どうしようか……。
少し悩んだ末、俺は話題を変えることにした。
「ところでさ、どうして花道さんは僕のことを推薦してくれたの?」
さっきからずっと疑問に思っていたことを質問する。”面倒な仕事を押し付けたい”という理由じゃないのならば、何故俺なんかを推薦したのか。それが気になる。
俺の質問に花道は、驚いたような照れ臭いような表情をしている。
「さっきも言ったけど、菊池くんって責任感がとても強いじゃない。だから推薦させてもらったんだけど……迷惑だったかな?」
うん、とても迷惑です! なんて言えるはずもなく。
「いやいや、むしろ僕も委員長やりたかったから、推薦してもらえてよかったよ」
なんて、心にもないことを言う。それを聞いた花道は、少し
「そっか。確かにみんなの前で手あげるのって勇気いるもんね。これからも委員長どうし、なんか困ったことがあったら言ってね! いつでも力になるから。それじゃあ私先行くね」
とても嬉しそうに教室に戻っていった。きっと俺なんかでも人の役に立てたのが嬉しかったんだろう。まあ俺にとってはありがた迷惑な話なのだが、それでも一度なってしまったものは仕方ない。「途中で投げ出さずに最後までやりきることができる」と彼女は言ってくれた。
自分ではそこまで責任感が強いとは思っていないが、彼女から見た俺はそう映るのだろう。だったら彼女の期待に応えるためにも、何が何でも最後までこの仕事をやりきる!
俺は教室に戻り授業の準備をする。どうしてかこの学校は、登校初日から授業がある。意味わからん。そんなこんなで、ぬぼーっと適当に授業を聞き流し、気づけば昼休みになっていた。
「それじゃあ今週までにこのプリント作成しといてくれる?」
俺は今職員室に呼び出され、大津先生に委員会のよくわからんプリントを作成するように頼まれていた。なんで俺がこんなの作らなきゃいかんのだ。こう言うのって先生の仕事じゃないの? もう早速委員長やめたいんだけど……。
委員長になってから4時間ほどで、俺のモチベーションは下がるところまで下がっていた。なんだよ責任感って! 俺ほどの
教室に戻ると、俺は自分の席に座りカバンの中から今日の朝コンビニで買っておいたパンを取り出す。そして制服のブレザーの左ポケットから携帯を取り出し、携帯をいじりながらパンを食す。携帯をいじると言っても、これと言ってすることがない。LINEで会話する相手もいなければ、インスタをみる相手もいない。
なにこの音の出る
だいたい昼休みって無駄に長いんだよ。なんで40分もあるの? 昼食なんて5分あれば足りるだろ。俺はあとこの20分なにすればいいんだよ……。他のやつはなにしているのかと思い、あたりを見渡すが喋っている生徒、携帯をいじっている生徒、そして勉強をしている生徒。どれも俺には無理だ。
喋る相手もいなければ、携帯もやることがない。そして勉強に関しては、俺は推薦がほぼ確定している。だからこの昼休みが俺にとっては一番苦痛だ。早くおわんないかなーと考え続けた結果、俺はこの時間を寝て過ごすことにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます