第14話 空きスペース③「お見舞いでお見舞いされる」

 ——ピンポーン。


『はーい』


「お見舞いに来てやったぞ」


『圭、来たんだね……!』


  ◇ ◆ ◇


 悔しいことに倉科母は不在だったため、チクることができなかった。

 葵がインターホン越しに『鍵開いてるから勝手に入って私の部屋の前まで来て』と言うので、俺はそれに従った。


 そして、部屋の前で止められている。

『私が合図したら入って』だと。

 なにを企んでいるんだあのバカは。まさか逃げる気か?


 そんなことを考えていると、ドアの向こうから『どうぞー!』と声がする。


「お邪魔しまー……」


「はーい全世界の皆さんッ! 最強美少女葵ちゃんねるでーすッ! なんと、今日はゲストをお呼びしています! こちら、私の幼なじみ、圭くんです!」


「…………?」


 入室するや否や、葵はビデオカメラを俺に向けてハイテンションな説明をする。


「さあさあ圭くん、リスナーさんにご挨拶! ……もう、恥ずかしがっちゃって! 彼はこの通りクソ陰キャ極まれりなんです! 優しくしてあげてねっ!」


「…………オイ待て。まずは右手のカメラを下ろすんだ。さもないと今買ってきた正露丸でメントスコーラしてお前の口に注ぎ込むぞ」


 葵は潔く俺の言葉を受け入れる。


「……まずはどういうことか教えてくれ」


「——学校とか不毛すぎるし、もういっそYou〇ubeで一発当てようと思って」


「はあ〜……思考回路が完全にバカのそれだな」


「なにを!? 私はこの通り美少女! 美少女がYou〇ubeで騒いだら人気出るって知恵袋の人が言ってたもん!」


 いや確かにそうかもしれないが……。

 美少女という点を否定できないのが物凄く悔しいな……。


「ちなみに、初投稿後九時間の今で登録者は二百人だよ!? 結構凄くない?」


「ま、まあ……」


「なんか結構有名なYou〇uberさんの動画で私が紹介されたらしくてね」


「紹介って、どんな動画なんだ……?」


「フフフ、興味がおありで? 今見せてあげるよ……!」


  ◇ ◆ ◇


 軽快なBGMが鳴り、葵の顔がドアップで画面に映る。


『はーい全世界の皆さんッ! 最強美少女葵ちゃんねるでーすッ! 初投稿ですよー!』


 バカ丸出しの挨拶をダブルピースと共に。


『今日は「しりとり」やっていきまーすッ! ……ソロプレイですッ!!』


「しりとりのソロプレイってなんだよ!?」


「まあまあ、見てなって」


『一人目はノーマル葵ちゃんです! うーん……じゃあ、リンゴ!』


 すると画面の中の葵が唐突に踊り出し、格好つけようとしたが失敗した感じのポーズを取る。


『二人目は暗黒神葵ちゃんだ。そうだな……ゴマとでも言っておくか』


 今度は目線を斜め上にして唇をすぼめ、お調子者の女子高生がプリクラでするようなポーズを取る。


『三人目はメルヘン葵ちゃんだよぉ! えっとね……マッチ!!』


「……まさかの一人三役!?」


「だってコンビ組めるような友達とかいないもん。だから変な理由で学校休んで圭をウチに来させたんだよ」


「策士じゃねーかお前!」


「まあまあ続きを……」


 画面の中の葵の下に(ノーマル)というテロップが。


『チかぁ……。じゃあ、チンパンジー!』


 テロップが(暗黒神)に変わった。


『……待て、それは「ジ」なのか? 「イ」なのか? あと小さい「ャ」とか固有名詞とかは……』


「面倒くせーな暗黒神!!」


「まあまあ、続きを……」


「見ねーよ飽きたわ!」


  ◇ ◆ ◇


「この動画を紹介したとかいう有名You〇uberの気が知れないぞ……。一体どういう括りで紹介したんだよ……?」


「え? 『イカレた底辺You〇uber十選』だけど?」


「正しくその通りじゃねーか!」


「いやでもこれで登録者増えたんならよくない?」


「よくねーよさすがに飽きるわ!」


「コメント欄も結構盛り上がってるよ? 『3:18 ここ谷間見えててゴチになりましたwww』いいね四十件」


「いいのかそれで!?」


「圭がコンビ組んでくれたらもっと売れるって……!」


「……いや、それは絶対にない」


「なんで……?」


「いやその——美少女で売ってる奴が急にどこぞの男とコンビ組むって……逆効果じゃね……?」


「…………はっ!」






























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幼なじみ依存症! 〜高校デビューに大失敗した幼なじみが、俺にひっついて離れない〜 𓀤 ▧ 𓀥 @kiokio45

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