第26話 会う事が怖かった

結局、光寿郎は不注意で怪我を

して搬送された事になっていた。


アパートも九条財閥が買い上げて

今住んでいる人達には迷惑かけた

お詫びに家賃一年無料‼

まあ・・・三万八千円が無料なんだから

みんな大喜び‼



あの暗いドームで流れた映像を

光寿郎 は忘れられなかった。

人の為になる事をしたい。



2ヶ月の入院生活が終わると

光寿郎は、直ぐ仕事復帰をした。

入院生活をしながら準備をした。


先ず新会社を立ち上げ

解雇した人物に仕事と給付金

を出した。


突然の求人に解雇された

人達は直ぐ申請をして申し込んだ。

仕事の出来ない人たちには

それなりの仕事を割り振り

一生懸命プロジェクトを立ち上げた。


専務の変わりように社内は一転

人が変わったようだと噂が走る

そして障害のある人たちを率先して

雇う、意見を聞きながら仕事しやすい環境が整った。


この不景気の中、業績はかなりUP

毎日忙しく、会社の往復の毎日

だった。


「光寿郎、お疲れ様。

お弁当作って来たの!食べて‼」


「おう、愛莉有難う。」


しばらく結菜とは会っていない。

入院していた頃は、朝から夜まで

付き添ってくれていたが復帰して

からは、俺が地方へ飛んだり

海外へ飛んだり、会社に寝泊まり

したりで1ヶ月は顔を見ていない。


つい後ろめたさもあり

連絡取る気も起きなかった。

いや、怖かったのかもしれない。


死を覚悟して買い漁った結菜の服も

バックや靴、死の間際にいたせいか

届け先が、俺の行きつけの店だった為、結菜の住所が分からず

会社に届いて専務室に山ずみ

されていた。


それにサイズもバラバラ

とりあえず自宅マンションに

はこんである。


やはり結菜はまだまだ許しては

くれていない。

会いたい気持ちが山程高いなら

会いたく無い気持ちも天程

高い。


足が遠のくのも仕方がない。




携帯を開いてはハァー

光寿郎のとこをポンと押せば

繋がるんだけど・・・。


あーあやめやめ

髪の毛を

グアシャグアシャグアシャ

掻きむしる。


ススキのような髪の毛ガユサユサユサ


「元気なんだろうか?」

死ねなんか呪いの言葉を吐き掛け

たせいで光寿郎は命を落としそうに

なっちゃったんだよね。


最低だ・・・💦


結菜も光寿郎も会いたい気持ちは

たまらないくせにお互い

会う事を怖がっていた。


浮気性の光寿郎とヤキモチ妬きの

結菜では矢張り上手く行く

はずも無いんだろうか?。


そうは言っても、ちょっと顔を

見るくらい大丈夫じゃない?


そうだよ‼

別に顔見るだけなら大丈夫‼



もう暑い夏をバタバタと過ごして

季節は秋。


今日中秋の名月を、🌾🌕見ながら

行ってこよう。

晴れてるからきっとお月様綺麗

だよね。


結菜は6時半迄仕事が残ったが

マイチャリ🚲に乗って九条財閥の

本社迄出向いた。


道を挟んで真向かいの通りに

待機する。


秋とはいえ夜は少し冷える。

仕事中軽く後ろでひとくくり

の三つ編みにしていた髪を

パラりと下ろす。

少し暖かい


結菜は光寿郎の看病をしていた頃には肩下まであった髪も

胸下迄伸びていた。


クルクルカールに

カーキ色のふわりとしたワンピース

に、上から薄い茶色の、

カーディガンを羽織っていた。


結菜は目立た無いように

していたつもりだったがまるで

お人形さんみたいに可愛らしく

行き交う男性は振り返り

振り返り歩いていた。


そんな結菜の前を一台の高級車が

信号待ちで止まった。


助手席には元気に笑う光寿郎

運転しているのは、綺麗な

愛莉さんだった。




思わず結菜は、バタバタと自転車を

握り車の進行方向とは別に

走りながら自転車を押していた。


振り返ると車はもう走り去って

いた。


「愛莉さんならいいや。

夏帆に取られるよりも心が

落ち着く。」


そう呟きながらも、そうだ

彼はモテる。

別に私じゃなくても大丈夫なんだ‼


結菜は自分の思い上がりが

可笑しくて笑っていた。

もう彼は吹っ切れてる。


必要とされていない事が少し

寂しいが当たり前か‼。ハハハ


4ね4ね言う彼女なんて・・・

要らないよね。





「どおしたの?

さっきから黙り込んで!」

愛莉は黙り込んだ光寿郎をみて

運転しながら声をかけた。


「あ💦ああ・・・ゴメン。」


さっきのは・・・あれは・・・

車の窓から見えた彼女は

結菜じゃ無かったか?


ぼーっと考え混んでいたら

予約した料亭に着いた。


愛莉と部屋に通され、和食が

並んだ。


「光寿郎話きいた?」


「ん?話なんの?仕事か?」


「うん、それもだけど

光寿郎も身を固めるって話し‼」


「いや、聞いてない笑」

光寿郎は和食の刺身を食べながら

愛莉に聞いた。


「親父?」


「うん。」


「また見合いか?アレかなり

疲れるんだよ。」


「ふふっ私‼」


「ん?何?」


「だから見合いよ、相手私だから」

光寿郎は金目鯛の煮付けに

箸をつけ手を止める。

「“冗談はよしこさん“笑」


「古、光寿郎、ほぼ決まりよ‼」


「愛莉、俺はお前とは結婚しない。

心に決めた彼女がいるんだよ。

彼女とじゃなきゃ生きている

意味が無い。」


「光寿郎、私じゃ何で駄目?

私の何処が駄目なの?」

箸を落としながら愛莉が叫んだ。


「君が彼女じゃ無いからさ!


愛莉の駄目なところは、俺を好き

な所じゃないのか?


愛莉は美人だし、仕事できるし

愛想もいい、お前を好きな男は

沢山いるぞ‼」


「私は・・・本気‼」

愛莉は信じられないと言う顔を

して俺を見た。



「俺は、アイツ以外とは

結婚しない、たとえどんなに

良い好条件を持つ美人だとしても。」




「な、ナーンちゃって

ꉂꉂ(ᵔᗜᵔ*)あははは

自惚れないでよ。」

笑いながらも愛莉の目には

涙が光っていた。


「ごめん、愛莉」


それから不運な空気が流れ

愛莉と俺は別々に帰った。



結菜に会いたい。

会って俺も愛莉が、俺に聞いた

ように結菜の気持ちを、

聞いてみたい。


街でタクシーを拾い結菜の

アパートを目指す。

自殺行為をした場所にまた足を

踏み込む。

しかし、多少気持ち悪い気もする。

あの日の気持ちが甦る!


駐車場には結菜の車らしき

白の経が止まっていた。

しかし下から眺める結菜の部屋

は真っ黒だった。


「何処に行ってるんだよ。」

時計は9時を回っていた。


「んしょ、んしょ!」

小さな掛け声みたいな声が自転車

置き場から聞こえてきた。


結菜は10キロの米とエコバックの

中位の袋を肩にかけ、

駐車場近くの階段を昇ろうと

していた。

すかさず駆け寄り米を抱えた。



えっ(´⊙ω⊙`)

ふっと現れた男性は、光寿郎

だった。


「あ、あれ?光寿郎?

ど、どうしたの?愛莉さんは?」


「ふぅ﹏๑

何で愛莉が出て来るんだよ。」


「だってさっき一緒だった

でしょう。」


「うん、仕事帰りだったんだ。

ヤッパリ結菜だったんだな‼」


「何で今更こんな気持ちの悪い

所にきたの?来たくなかったん

じゃない?(笑)」



「じゃあ何で結菜はここに

住むんだ?

九条不動産から引越しの

打算があったはずだ‼

家賃か?タダだからか?」


「違う、ここには・・・

アンタの本気が有るから


何一つ信じれなくても

あの血の痕は光寿郎が本気で

好きで居てくれた瞬間があるの‼

それだけは信じれる。」


「・・・」


「お米、自分で持つから・・・」


結菜が手を出すと

光寿郎は米を持ったまま階段を

上がった。


「ちょちょ、ヽ( ̄д ̄;)ノ待ってー」

結菜も階段を駆け上がる。

光寿郎は、結菜を待つように

結菜の部屋の前で立ちどまる。



自分の自殺行為が甦る

ココに座って瓶を割り腕を切りつけ

余りの痛さにもっと深く手首を

切った。

半端なく痛すぎる、あんな事は

二度としたくない。

痛いってもんじゃない!

死ぬなんて考える奴は死ぬ気に

なれば何でもできる。


死んだらこの世に帰れない

たった一回の一生を自ら

捨てるのはやめたほうがいい。




「重いから早く開けて‼」


「う、うん。」


初めて入る結菜の部屋は語学の

本が沢山並べられていて、

木で作られたかなり丈夫な木目の

ダイニングテーブル

うさぎのでかく細いぬいぐるみが

ソファーベッドに凭れていた




それなりに整理整頓された部屋は

居心地が良さそうだ。


俺たちはお互いの家に行き来した

ことすら無かった。


「ビール🍺飲む?

手、切った時の残りあるけど・・・💦」


「(꒪꒳꒪;)ウッ‼」


「じゃあ炭酸にする?」


「イヤ、珈琲で‼〜」


「☕ね、インスタントしか

ねーから、光寿郎の好きな

高ーいの、ナイから‼」


「キャッ」

後ろから結菜を抱きしめた。


「俺が嫌い‼

嫌いならそう言って・・・💦

諦め無いけど出直す・・・


結菜も堪らず抱きついた。

えっゆ、結菜?‼‎( ⊙⊙)!!」

結菜も咄嗟に抱きついた。


「許さない‼

裏切り者‼」


俺はホンワカ柔らかい結菜を

抱きしめた。


「ごめん。

許さなくていいよ。

信じてくれなくていい

でも・・・愛してる。」


「ホントは、会いたかった。

何で会いに来なかった?

なんで連絡しなかったの?

別れたいんじゃないの‼」


「フフフ髪伸びたね。

今日、車の中から可愛らしい

結菜を見つけたんだ。



俺に結菜を見せびらかしに

きてたのか?

こんな可愛くして・・・

心配させたかったのか‼

ヤキモチ妬かせたかったのか?」



結菜の柔らかいクルクルカール

が背中に回した手を包む。


今迄のすれ違いを埋めるように

結菜と朝まで抱き合った。

勿論、ヤリ尽くすくらいの

愛情は止まらない。


「なんだ、俺達両想いじゃ

ないか。

心配する事無かったな‼」








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