No.6 幻獣

No.6 幻獣

レイドは攻撃が終わるとすぐに次の攻撃に入る。レイドは右腕を振り上げる。彼は走り出し幻獣に近づく。距離がかなり縮まり残り3メートルもないところでレイドは軽くジャンプし、その振り上げた右腕を幻獣を斬り付けるように振り下ろす。

ジジジ、ジジジ

その振り下ろされている剣が稲妻が走るように黄色の閃光を纏う。そして、その剣は見事幻獣にヒットする。人間でいうと首の付け根部分に攻撃は当たった。そして、剣が幻獣に当たった瞬間にその剣の周りから電撃が放たれる。

ビリビリビリー

(これはどうだ?最低でも麻痺とかしてくれると助かるんだけどな)

レイドが幻獣に感電している電撃を見てそんなことを思っていると、

ブオォン

横から勢いよく幻獣の右腕が振り払われようとしていた。

レイドは剣を幻獣に押し込むようにして起点として前に転がり込むようにして攻撃を避ける。

ブン

幻獣の攻撃が空振る音がするのと同時にレイドが着地する。

タッ

シュッ

そして、すぐさまにその場を離れる。

(外傷は全くなしか。ダメージによる解除は望めないな。あと、あの様子だとオーラを纏っていない状態で触れるみたいな近距離での接触も避けた方が良さそうだ)

レイドがそんなことを思っていると幻獣はレイドの方を向き直る。

(俺の思ってたことが1つ解消された。やつの狙いはヒメカじゃなく、俺だ!この幻獣はヒメカを連れ戻すために創られたんじゃない!ヒメカを手助けする者を排除するためのものだ)

レイドは苦い顔をする。そして、左腕を広げて能力を発動させて、左手に剣を具現化させる。先程、出した電気を扱う剣は前使った炎を扱う剣同様短剣だった。見た目はギザギザしていて雷が落ちている様子を表すような形と模様をしていた。しかし、今回は短剣よりも長い剣が出てきた。だが、普通の剣の半分程しか長さを持たず日本刀と同じぐらいの太さしかない。その上、剣先は西洋剣のような尖形をしており、さらにゴツゴツとした見た目でまるで岩をそのまま剣のイメージにして創られたような剣である。

(今回は鉱石のやつか。悪くはないが…)

レイドが剣を見定めていると幻獣がレイドに襲いかかってくる。

(これで決定だな。これは完全にヒメカに加担する他者を対象としている能力だ。だから、建物のすり抜けなんていう高度な能力が組み込まれていたんだな)

レイドの考察は大体当たっていた。

(まあ、さっきからすり抜け能力を使わないのは意味がないからだろうな。俺に対して使っても邪魔者を消すことはできないからな。もし、この能力がヒメカに加担する者を消すまでが幻獣の具現化の制約だとした場合、俺達が解除する方法がないことになる!俺が死ぬ以外に!)

幻獣から強靭な左腕から繰り出される強烈な攻撃が飛んでくる。それをレイドはなんとかギリギリのところでかわす。

「危なかった。戦闘中に考えすぎた」

レイドはそう言ってまた幻獣から距離を取る。

(攻撃は速いが単調だから避けやすいな。だが、一撃は重そうだから気をつけないと)

レイドは注意事項を頭の中で確認し、右手から剣を離す。

レイドは左腕の剣を上に掲げる。そうすると、その剣の周りに様々な形の岩石がいくつか現れる。

シュッ

それもレイドは振り払うように相手に向けて振り下ろす。

ヒュンヒュンヒュンヒュン

そうすると、剣のまわりに現れた岩石は幻獣に飛んで行き何個かが直撃する。

ガンガンガンガン

幻獣は岩石が当たった衝撃で少しずつ後退していく。

レイドは連続して剣を振り払い続ける。その度に岩石が具現化され、それが幻獣に対して放たれる。

ガンガンガンガンガンガン

岩石はまばらに飛んでいき、幻獣にヒットする。それに対して幻獣は連続して多くの数が飛んでくる岩石に対応しきれず防戦一方の状態になっている。それを見越してレイドは動き出す。

タッタッタッ

(このまま、あいつにオーラのない状態でも触れることができるかもしれない。やつに岩石が触れても意味がないことはわかった。だが、触れることだけは試さないと前に進めない)

レイドはそう考えながら幻獣の元に勢いよく走っていく。その間にも能力によって岩石を放ち続けている。レイドはこの岩石攻撃を受けてそれを払い退ける力を幻獣が持っていないことを今のこの攻防のうちに見抜いた。状況判断能力は低く、さほど体全体の平均バランス力は強くないと理解していた。あの幻獣はパワーだけだとレイド考察した。しかし、まだすり抜け能力があることをレイドは頭に入れていた。

ガンガンガンガンガンガン

数多の岩石が幻獣にヒットし続ける。

タッタッタッ

レイドは幻獣に詰め寄っていく。レイドと幻獣の距離は僅か3メートルもないところまで縮まっていた。幻獣らレイドが近寄ってきていることに気づき、右腕を振り回してレイドに勢いよく攻撃しようとする。

「いくぞっ」

レイドは剣の力によって岩石の盾を創り出し、それで幻獣の攻撃をうまく受け流す。そして、レイドは岩石を踏み台にしながら勢いよく飛び上がり幻獣の頭上に飛び出す。

ピタッ

右手のオーラを消し、幻獣に掌で触れる。しかし、なんの変化も起こらない。

「チッ、これでもなかったか…」

ブワン

ダスッ

レイドは幻獣に触れている右掌に力を入れて幻獣を利用してそのままの勢いで幻獣から離れる。

ある一定の距離を取るとレイドは立ち止まる。

「…どうすればいいんだ?」

レイドの本音が口から溢れる。

(いや、まだ試していないことは残っている。だが、やはり一つ一つ試していくのは効率が悪い。なるべく絞っていきたいな)

レイドは幻獣を凝視しながらそう思った。そう思ってると幻獣は方向転換してレイドの方に向き直る。

(やはり、あくまで俺狙いか。ヒメカを連れ戻すのために周りにいる邪魔ものを排除するための能力。発動条件はなんだ?)

幻獣はレイドの考え事などは無視で突撃してくる。

タタタ

ブンッ

幻獣が大振りの攻撃を仕掛けてくるが、それをレイドは軽く躱す。

そして、ヒメカのいる方に走る。レイドは考え込みながら走り続ける。

(もしかしたら、可能性はある。ヒメカをターゲットにしないのなら可能性は高いかもしれない。早くヒメカのところに追いつかないと)

レイドは何か考えが浮かんだのかヒメカがいる方に全力で走る。

タタタ

幻獣もそのレイドの向かっている方向に進行を始める。

レイドは後ろを振り向いて幻獣の様子を伺う。

(やっぱり遅いな。あれで、あんなに早く追いつくのか?)

レイドがそう疑問に思っていると幻獣の動きが変わり始めた。

タッタッタッ

一つ一つの動作が早くなっていっている。

「ん、なんだ?さっきよりスピードが速くなってる?」

レイドは思わずに口に出してしまった。

レイドと幻獣の距離がだんだんと縮まっていく。

「なに?!」

(これはまずい…)

タッタッタッタッタッタッ

カツ

あっという間にレイドと幻獣の距離がなくなり、レイドと幻獣は対峙する。

(こいつ、攻撃は勢い任せでどちらかというとノロイくせに移動は早いのかよ。どうなってやがる)

そんなことを思っていると幻獣が自身の腕のようなものを拳のように構えて殴りかかってくる。

シュゥゥ

シュッ

レイドは剣の力で岩石を出して、盾にする。

バキバキバキ

しかし、幻獣の攻撃を完全には受けきれず岩石の盾は破壊されてしまう。レイドは一瞬の隙を見逃さなかった。

パッ

岩石によって阻まれた攻撃は明らかに勢いが弱まっていた。そこを見抜いてしっかりと後方に交わした。

(この剣じゃダメだ)

トツ

しっかりと着地をしてレイドは幻獣から少し距離を取る。

そして、右手を構えて能力を発動する。能力発動“剣の魔法(ソードマジック)”!

レイドの手には薄い白に近い水色のレイピアのように刀身が細い剣が出てきた。それを右手でしっかりと掴む。

(これは氷の剣か。剣の中では当たりの方だな)

パッ

シュゥゥゥ

レイドは左手で持ってた剣を手放し、右手の剣を下から振り払う。

バリバリバリバリ

剣から冷気が斬り払ったところから出てくる。そして、その冷気は氷塊を出現させた。

バリバリバリバリ

ドカンッ

氷塊は見事に幻獣にヒットする。少し仰反る様子を見せる。

フワン

ドンッ

その一瞬をレイドは見逃さなかった。レイドはオーラを足に集中して宙に高くジャンプする。そして、剣を真っ直ぐ高く突き上げる。オーラが剣に集中する。そうすると、剣の周りに大きな氷塊が無数現れる。氷塊はレイドよりひと回り大きいサイズだ。かなりの数がレイドの周りに氷塊が存在する。

シュッ

レイドは剣を幻獣に対して振り下げる。

シュシュシュ

シュシュシュ

そうしたことによってレイドの周りにあった全ての氷塊が幻獣目掛けて勢いよく飛んでいく。

ガツガツガツ

幻獣に氷塊の多くがヒットする。しかし、レイドの目的は氷塊を当てることによっての幻獣の動きを封じることではなかった。幻獣の方に視線を向けると幻獣は氷塊に囲われて動きが取れなくなっていた。

タッ

トッ

レイドが着地し、すぐに幻獣の元に向かって突撃していくように走って向かっていく。

(計算通りの動きだ)

レイドは思いっきり踏み込んで飛び上がって幻獣の頭の上を取る。そして、幻獣を囲っている氷塊に飛び乗る。

「これでどうだ!」

剣を振りかざすと冷気が幻獣全体を覆う。

「このまま凍って固まってやがれ」

レイドがそういうと幻獣の周りに漂っている冷気が固まって凍っていく。

カチカチカチ

幻獣はレイドの手によって凍らされた。

「まあ、これでヒメカと合流するための時間は稼げるだろう。まあ、どうせこいつに感覚器官はないんだからそのうち力技で脱出してくる可能性が高いけどな」

シュッ

レイドはそう言ってその場を去る。

ボワン

ドドド

オーラの全体量を多くして速度を加速させる。あっという間に幻獣のいた場所から離れていく。

(俺の予想が正しければあの能力を解除するためにはヒメカが必要だ。早く追いつかないと)

レイドはそんなことを考えながら街を颯爽と駆け抜けていく。

レイドと幻獣は広場で戦っていた。そのため、残された氷付の幻獣は周りにいた人たちに囲まれ不気味がられると同時に興味を誘うオブジェのような状態になっていた。





今回もペース悪くてすみません。ですが、次回にはこの戦いを終わらせます。ちゃんと次回からは話が進んでいきます!だから、諦めずに次回も見てください!ほんとにお願いします!

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