No.5 傀儡


一方場面は少し戻ってレイド達の前に先ほど現れた幻獣に移る。

幻獣はゆっくりと立ち上がる。そして、少しずつ歩き出す。玄関のドアを持ち前の搭載能力であるすり抜けで玄関をパスする。すると幻獣はそのまま真っ直ぐ進む。

本来であれば真っ直ぐに進んだところで生物が落ちないように塀やフェンスがある。もちろんこのマンションも例外なく、それがある。その上、塀やフェンスとは別に外には生物が下に落ちないように特殊な透明なバリアが貼られているため落ちることはない。つまり、独はマンションから落ちることはできず、下に移動するためにはテレポートエレベーターや階段を使わなければならない。飛び降りなどこの時代、この世界にはそんなものは出来ず存在しない。そのため、普通であれば生物はこのマンションから飛び降りることができないが、この幻獣は違った。

この幻獣に備わっている能力でその塀もバリアをすり抜けることができたのだ。そのため、幻獣はそのまま真っ直ぐに進み、塀やバリアまでもすり抜けてなんとあろうことか落下していった。かなりのスピードで落下していく。

シュシュシュシュ

ススススススス

ズドォォォォォンンンンン!!

見事に幻獣は二本足で着地する。この言い方だとおかしいような表現であるが、人間が飛び降りて着地する時と同じような格好で地面にしっかりと着地をした。

流石にこの響く音にこのマンションの周りにいた独達は幻獣に視線を向ける。皆は不気味なものをみて、怖がり、怯え、退いた。そんな視線も様子も気にすることなくその幻獣は真っ直ぐに正確にレイド達のいる方角に歩き始めた。



場面変わってある研究所。

ある1人の人間がモニターを見ている。そこに映し出されていたのはヒメカとレイドの様子だった。

「まさか、“透かす傀儡人形(ドッペルパペット)”が急に現れたのにも関わらずしっかりと冷静に対処してくるとは…この少年何者だ?普通にそこら辺にいる奴らじゃこんな風に咄嗟に冷静に判断して対処していくことなんてできない筈…流石だ、ヒメカが選んだだけはある」

そう言葉を放った後もモニターをこの人物は眺め続ける。



そして、場面はレイド達に戻る。

「幻獣を具現化する能力には何パターンかある。現実性生態タイプと非現実性創造タイプの2つがある。そこからもいくつかに分かれている。前者は、実際に実在する生物と同じように感覚や思考などがあり、生物と同類のものとして考えてもよいようなオーラによって創られたものだ。もっと簡単に言うとより本物の生物に近いものということだ。後者はそう言った生物が持つ感覚のようなものを全く持ち合わせていない。つまり、生物のように生きているみたいな動きをするが実際の中身の作りは全く違う。生態タイプと異なり、生物を模したようなものでなく全く現実離れしたような風貌をしたりしている。俺達を追ってきているのは後者である非現実性創造タイプの幻獣能力だ」

「えーともっとわかりやすく言うと?」

「さっき俺は剣から炎を出して攻撃しただろ?」

「うん、そうだけど」

「生態タイプは皮膚があったりとすると感覚器官が備わったりしていて生物と同じように暑さを感じたり、その熱によって火傷を負ったりする。そうなれば、俺のさっきの炎攻撃で暑がったり、避けたり、火傷に苦しんだりする筈だ。でも、あいつにはそんなことはなかった。ということはつまり、あいつには感覚器官などがついていない。生態タイプでなく創造タイプだとわかる」

「だからって幻獣の対処は変わらないんじゃ…」

「幻獣は基本的にはいくつかの対処方法がある。それはどちらも共通なものもあればどちらか一方だけに当てはまるものもあったりする。生態タイプは現実の生物のような特徴があるからある程度ダメージを与えると形を維持できなくなって能力が解除されることもある。まあ、大体は制約によると思うけどな。創造タイプは逆に生物的な特徴がないからそういった解除方法は少ない。だが、両者ともに当てはまる方法がある」

「どういう?」

「単純だ。能力を発揮した能力者を倒せばいいだけだ。能力者の意識がなくなったりなんかすると解除される能力もあるからな。だが、たまに出し入れ自由のタイプの幻獣もいる。能力者の意思一つで自由自在に幻獣わ出し入れするタイプもいる。そういうタイプはこちらが条件を満たせることはない。つまり、他の他社はその幻獣の能力を解除することはできない。だが、基本的に幻獣の能力は何かの条件を満たした時に解除されやすい。そういう制約をつけることで能力の発動自体を簡単にしている。例えば、自分が触れた相手を追尾する幻獣がいるとする。この幻獣は触れた時点で幻獣が現れ触れられた対象を追う。ここまでだとノーリスクに近い。だが、能力にはデメリットを作り縛って制約することで初めて能力が発言する。お前の“天使の手助け”は自動発動によるランダム要素があることが制約になっているんだろうな」

(すごい難しいこと言ってる…)

「つまり、制約にあるんだよ。あの幻獣の能力を解除する方法が。さっき言ったように、例えばあいつは能力発動者本人が少しでも一瞬でも触れてしまうと解除されてしまう可能性があったり、逆に他者のオーラに触れると解除されたり、と思ったらオーラを切った状態に触られたりしたら解除されるみたいなものがある。あの幻獣にもそういった制約がある筈だ。それを探り出してあの能力を解除する」

「え、でも、それって私達が干渉して解除できる制約じゃなかったらあの幻獣は永遠に私達を追ってくるってことですよね?」

「…その通りだ」

「それってやばくないですか!」

「だが、安心しろ。能力発動者のみの干渉による解除が制約ではないだろう。ヒメカの話を聞く限りだとここからその施設とやらは相当距離があるようだ。つまり、遠隔操作型の能力となる。遠隔操作型の能力は自身干渉だけの制約でここまでの高クオリティの幻獣を創り出すことはできない。あの幻獣はなんだって協力なすり抜け能力を持っている。あれを自分が何かしただけで出し入れが簡単にできる能力のはずがない。それなりに重い制約がある筈だ。だが、あの幻獣は誰かの意思を感じないところを見るとオート操作によるものとも判断できる。独が操作した場合もっと複雑で早い動きをする。あの一瞬しか鉢合わせていないがそれぐらいはわかった。あの幻獣は遠隔自動操作能力保有型の創造タイプだ。ああいうのは外的の要因に制約を置く以外にあれを創り出すのは難しい筈だ。だから、あいつには弱点がある筈だ」

「でも、もしそれが外じゃなかったら?」

「そう祈る以外に俺達にあれを対処する方法はない」

「…そこは適当なんですね」

「いや、俺だってまだ中学生だからな」

レイド達がそんなことを喋りながら走っていたらいつのまにか幻獣が自分たちの視界に入る距離にまで迫っていた。

「なに?!もう追いついたのか!」

レイドはいち早く気付いて声を上げる。

「私を抱えながらじゃそうなります」

「だからって置いていけるわけないだろ」

(くそっ。思ったより早えぇ。マンションにいた時の動きから推測してかなり鈍い奴だと思ってたのに!)

レイドは口元を濁らせた表情をする。

「レイド、どうするんですか?もう追いついてきましたよ」

「この様子じゃ逃げても無駄らしいな。ここで応戦するしかない」

「でも、まだ解除方法がわかっていなんじゃ…」

「確かにわかってねぇ。というか、考えたところで分かるわけがねぇ。可能性を並べることしかできねぇ。だから、これから立ち止まって色々試してみるしかない。幸いにもデータもあるしな」

「データ?」

「さっき一瞬だが交戦しただろ?その時、いくつかわかったことがある」

「あの一瞬で!」

「まずは攻撃無効耐性みたいなものは持っていないということだ。俺の足蹴りが効いたからな。つまり、打撃みたいなのは攻撃として有効だということだ。あとは、高い熱や火を感知することでは解除されない。まあ、思い出してみれば分かることだ。後は最低でも俺みたいな他者のオーラが触れても解除されないことまではわかっている。俺の剣に当たっているのにまだいるんだからな」

「確かに…!あの一瞬でも様々な情報がありますね」

「ここから地道に手探っていくしかない。まあ、多分憶測だが現象では解除されないとは思うがな。火の感じをみると」

レイドはそう言って抱えていたヒメカを解放して、その場に立たせる。そして、レイドは自身の能力を発動させる。

“剣の魔法(ソードマジック)”

レイドは右手にまたしても能力を使って剣を具現化させる。

「…今度の剣は?」

ヒメカは呆然と立ちながらレイドが具現化した剣について聞く。

「これは電気を出して操ることのできる剣だ。まあ、俺の能力にはまだ制約があるからな。この戦いが終わったら教えてやるよ。俺の能力は教えたところでどうってことないからな。まあ、親父にお前の能力は相手に知られない方がいいと言ってたがそんなのは関係ない。ヒメカはこのまま俺を置いて逃げろ。俺がなんとかする」

「え、でも!」

「早くいけ。お前がキーパーソンなんだからな」

「はいっ」

ヒメカは返事をして走って行った。

(あいつを1人しない方が本当はいいのかもしれないが。俺とあいつが離れることで分かることもあるし、近くにいてもやり辛い)

レイドはそんなことを思いながら幻獣に向かって突撃する。

幻獣は人であればありえないような走り方をしながら2人の元に向かっている。

レイドと幻獣の距離がなくなる。そうすると幻獣が止まり、レイドに攻撃しようと構えをとる。幻獣は右腕を振り上げ、そして、その腕を振り下ろしレイドに攻撃しようとする。しかし!

シュッ

先にレイドのオーラを集中させた左拳が幻獣に直撃する。

ドゴンッ

幻獣は後ろに態勢を崩さずに後ずさる。

その様子をじっくりとレイドは見ている。

(生物、独の皮膚に直接触れると解除されるかと思ったが、そんなことはなかったか。じゃあ、次はリスクは高いがオーラを纏っていない状態のものならどうなるか試さないと)




今回、今までで1番テンポ悪くてクソでしたねw幻獣の説明が長すぎて読む気失せると思いますw私も読む気失せますもんw本当に説明下手くそ過ぎてすみません。許してください。次回は結構いいテンポになる予定なので頑張ってくださいw

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